マネジャーの半分以上が「燃え尽きて」いる
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サマリー:マイクロソフトが2022年9月に発表した最新の調査によると、マネジャーの半数以上(53%)が仕事によってバーンアウト(燃え尽き症候群)の状態にあると感じているという。本稿では、マネジャーがバーンアウトに陥る... もっと見る過程とともに、この状態を改善する5つの手段を紹介する。 閉じる

マネジャーはコロナ禍で燃え尽き状態に

 マイクロソフトが2022年9月に発表した最新のワークトレンドインデックス(複数の業界・企業の労働者を対象とした世界的な調査)によると、マネジャーの半数以上(53%)が仕事によってバーンアウト(燃え尽き症候群)の状態にあると感じているという。

 たしかに、この数値は非常に高く、一般の従業員における割合をわずかに上回っている。とはいえ、驚くことでもない。マネジャーは新型コロナウイルス感染症のパンデミックの最中もその後も、従業員を導いてきた。増大する要求を以前より少ないリソースで管理しつつ、彼らに共感しながら率いるという難しい局面に立たされ、しかもその努力はほとんど評価されなかった。こうした受け入れがたい状況に、多くのマネジャーが苦悩している。

 組織のバーンアウトの流れを変えるためには、リーダーシップとHR部門がバーンアウトの構成要素を理解し、測定して、マネジャーのバーンアウトに適切な対応をすることが不可欠だ。マネジャーの声に耳を傾けることは、警告のサインを認識する方法の一つでもある。マイクロソフトは早くから社内のマネジャーのバーンアウトについて学ぼうと努力しており、そこからこの重要な取り組みを始める際に組織として注目すべき領域が明らかになった。

マネジャーはバーンアウトをどのように経験するか

 バーンアウト研究の第一人者である、カリフォルニア大学バークレー校名誉教授のクリスティーナ・マスラックによれば、バーンアウトとは職場で慢性的にストレスを感じていることに対する反応で、疲労困憊して、シニシズム(冷笑主義)になり、仕事上の達成感が下がる。こうした症状が表れる理由は、持続不可能な仕事量、コントロール感の低下、努力に対する報酬が不十分であること、支援的なコミュニティの欠如、公平性の欠如、価値観とスキルのミスマッチの6つに分類される。

 今日のマネジャーは、仕事量が多いにもかかわらず、限られたリソースしかない状況に疲弊している。この課題はすべての従業員に関連がある一方で、マネジャーは自分の仕事に加えて、チームのメンバーが成功するために必要なものを確実に手に入れられるようにする責任も負う。こうした要求の一部は、パンデミック以降、変化し、拡大している可能性がある。従業員は自分の仕事にもっと意味を求め、自分の目的をより理解するようになったからだ。

 パンデミック後の職場で、マネジャーがチームを調整し、チームが影響力を発揮できるように助けるためには、これまで以上にフィードバックとサポートが必要になる。しかし、筆者たちの調査によると、マネジャーはピープルマネジメントのスキルのコーチングや開発をあまり受けておらず、自分の上司からあまり評価されていないと感じている。これらの要因から、マネジャーは自分のキャリアの目標を達成することはおろか、現在の職務で影響力を発揮する能力が自分にはないと感じているのかもしれない。

 バーンアウトへの対処は、マネジャーのこうした兆候を理解するところから始まる。そのうえで、取るべき行動を見極めていく。マイクロソフトでは年2回の社内調査で、スライビング(繁栄すること)の概念を中心に、従業員が活力を感じ、意味のある仕事をする力を与えられていると感じるように、どのような手助けができるかを分析している。

 その一環としてバーンアウトを測定するために、マスラックが挙げる「疲労」「シニシズム」「職務効力感」の3つの側面に注目している。マイクロソフトの結果が必ずしもすべての企業に当てはまるわけではないが、ほかの組織のマネジャーの間で当たり前になっているかもしれない重要なシグナルを浮き彫りにするだろう。

 たとえば、マネジャーは一般社員より、疲労感や職務効力感の喪失を経験しやすい。また、一般社員を管理するマネジャー(フロントラインマネジャー)は、ほかのマネジャーを管理するマネジャー(ミドルマネジャー)より、シニシズムを経験することが多い。マネジャーが組織で出世して、その役割の範囲が広がるにつれて、仕事からより多くの意味とエネルギーを感じるようになり、シニシズムの軽減につながるだろう。

 当然ながら、バーンアウトを経験すると、生産性の低下や離職など、マネジャーにとっても会社にとってもマイナスの結果になりかねない。たとえば、自己申告による生産性は、バーンアウトの3つの側面のうち一つでも経験しているマネジャーは低くなる傾向があるが、3つすべてを経験しているマネジャーは平均で22ポイント低かった。

 自主退職について見てみると、疲労を感じているマネジャーは、そうでないマネジャーに比べて会社を辞める可能性が1.8倍高い。シニシズムを経験しているマネジャーは3.0倍、職務効力感の喪失を経験しているマネジャーは3.4倍、自主退職の可能性が高い。さらに3つの側面すべてを経験しているマネジャーは、そうではないマネジャーに比べて、会社を辞める可能性が5.3倍も高くなる。