マネジャーのバーンアウトを軽減する

 マネジャーはチームのバーンアウトを緩和する役割を担っているが彼ら自身のバーンアウトの深刻さがどの程度にあるかも同じくらい重要だ。筆者たちの調査から、バーンアウトを改善する手段として次のようなものが挙げられる。

意味

 フロントラインマネジャーの仕事と本人にとって重要なことを結びつける方法が見つかれば、バーンアウトの潜在的な悪影響を和らげるのに役立つだろう。マネジャーは自分の役割を振り返り、仕事で何が自分に活力や意味を与え、何がそれらを損なうかについて、自分のリーダーと率直に話し合う。筆者たちの調査では、真のバーンアウトを経験しているマネジャーは、自分の仕事が自分のスキルや能力を十分に活かしていると感じる度合いが46ポイントも低かった。

学習とキャリア開発

 マネジャーとそのリーダーは、職場に活力をみなぎらせるような新しいプロジェクトを検討し、目標を達成するために必要なことをオープンに話し合い、会社のキャリアパスの可能性について透明性を確保する。さらに、マネジャーのリーダーは、マネジャーの全体像を把握して成長すべき点を明確にするために、複数のソースからのフィードバックを取りまとめて考えなければならない。

柔軟な働き方

 マネジャーは柔軟な働き方のサポートを続けることによって、自分のスケジュールに権限を持っていると感じることができ、疲労感の軽減につながる。真のバーンアウトを経験しているマネジャーは、自分にとって最適な働き方をサポートされていると感じる度合いが35ポイント低い。

 ここで重要なのは、仕事のスケジュールに関するチームの規範と希望をまとめて確立することだ。そうすれば、柔軟性に関する自分の希望がほかの人に与える影響を心配せずに、自分にとって最適な方法で働くことができる。マイクロソフトでは、効果的なチームの取り決めのつくり方について、マネジャー向けのワークショップを開催している。

心理的安全性とサポート

 筆者たちの調査では、バーンアウトを経験しているマネジャーは、声を上げることに抵抗を感じている。マイクロソフトのマネジャーが真のバーンアウトを経験している場合、経験していないマネジャーに比べて「職場で安心して発言できる」という感覚のスコアが34ポイント低い。彼らはさらに、影響力のあるプロジェクトやタスクの優先順位を決める際に、自分の上司がサポートしてくれないとも述べている。この領域のサポートについて、バーンアウトを経験しているマネジャーは、経験していないマネジャーより30ポイント低く評価している。

 マネジャーとして、自分にも助けが必要かもしれないという事実を隠す必要はない。リーダーと一対一で行うミーティングの準備をして、優先順位を決めるアイデアを共有し、リーダーからサポートを受けよう。提案や解決策を生産的に話すことは、活発なやり取りと健全な会話の機会を生む。

 リーダーとして重要なのは、自分の間違いを認め、弱さを見せることを当たり前のことにして、チームから積極的に意見を募り、受け取ったフィードバックに生産的に対応することだ。それがチームや上司との間で、心理的安全性を高めるだろう。

セルフケア

 マネジャーがチームのことに集中する前に、セルフケアをできるようにすることも重要だ。つまり、他人を助ける前に「まず自分が酸素マスクをつける」のだ。マネジャーが自分としっかり向き合えば、適切な行動の手本になるだけでなく、従業員に対するプレゼンスも高まる。

 マイクロソフトでは、マネジャーがセルフケアを実践し、一日を通じて充電する方法を学ぶトレーニングセッションを設けている。また、境界線を引いて他者の境界線も尊重する方法や、チームとこうした議論をするための簡潔な指針も提供している。マネジャーがこれらのスキルを身につければ、従業員にも同じように促しやすくなる。

 マネジャーが成長し成功するために、組織はたえず彼らに耳を傾け、フィードバックに基づいて行動し、進捗を測定する。疲労、シニシズム、職業的効力感というバーンアウトの3つの側面を検証することは、バーンアウトの状況を理解して、それぞれの側面を改善するような行動を決めるカギとなる。マネジャーが雇用主とオープンに対話できると感じるほど、組織はバーンアウトの流れを食い止め、すべての人のエネルギーが持続する職場環境をつくろうと努力することで、フィードバックループはより豊かになっていくだろう。


"More Than 50% of Managers Feel Burned Out," HBR.org, May 18, 2023.