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ターンアラウンドの要:社員たちの自信回復と信頼関係の再構築
ここ数年、私は再建中の企業を内部から調べてきた。その数は20余社に及ぶ。それぞれ段階は異なるが、どこでもニュー・リーダーが行き詰まった組織を衰亡の淵から引き揚げ、その健康を回復させようと奮闘していた。
これらすべての企業に共通していたのは、財務と戦略の両面において何が賢い方針なのか、多岐にわたって模索していたことである。この必要性は私のみならず、だれもが認めるところだ。ところが調査を続けるうちに、企業再生を担うリーダーたちは、これらに関連してもう一つ重要な仕事をしていることに気づいた。
これは、多くの研究者たちが見逃してきた、それゆえ調査されたことのないと思われる任務だが、企業を上向かせるには財務や戦略と同じくらい重要であり、かつ等しく難しくもある。すなわちそれは、社員たちの自信を回復させることであり、また信頼関係を向上させることである。
投資家や世間の信頼を回復するには、まず社員間において同様のことが求められる。私が調査対象としたリーダーたちは、新しい行動、新しい収益構造に向けて、社員たちの士気を高め、エンパワーメントを推し進めていた。要するに、企業再生には精神面の再生も必要なのだ。
では、これらの企業の新CEOたちはどのような事態に遭遇したのか、3つの例を紹介したい。
ジレット
言うまでもなく、ジレットは国際的な消費財メーカーである。90年代半ばまで、同社の業績は力強いものだったが、その後は販売不振、売上高営業利益率の低下、市場シェアの減少に苦しみ、2001年初頭までの数年間、低迷し続けた。
ひげ剃り用かみそりの〈マッハ・スリー〉は大ヒットしたが、トレード・ローディングに頼った販売方法のつけは高かった。つまり、在庫処分と販売目標の達成に向けて、四半期末ごとに消費者に値引きを提供し、その結果利益率が犠牲となり、さらに翌期の販売量を危険にさらすことになったのだ。
またジレットでは、担当商品や担当地域が異なると、担当外の執行役員たちが会議に参加することはほとんどなく、したがってそれぞれが勝手に行動していた。
何かを決めても連絡し合うことはなく、そのため無駄と重複が起こりやすく、SKU(ストック・キーピング・ユニット:在庫の管理単位)、もしくは商品のバリエーションの数が増えていった。そのせいか、互いに尊重し合う文化も風化していた。
BBC
99年当時、英国放送協会(BBC)は、社内の士気の低下によって危機的な状況に追い込まれていた。