自叙伝をめぐるさまざまな反応

 2001年9月、ジャック・ウェルチは、ゼネラル・エレクトリック(以下GE)の会長兼CEO(最高経営責任者)の座から退いた。

 1981年に始まったウェルチの在任期間中、GEは売上高にして250億ドルから1300億ドルへ、時価総額は130億ドルから4000億ドル強へと大幅な成長を遂げた。

 こうした実績に劣らず重要なのは、人々の間でGE、ウェルチ、そしてビジネスというものへの関心が驚くほど高まったことだ(数値で示すことは難しいが)。ウェルチがGEを率いていた時代、企業や企業リーダーの存在が、これまでになく大衆文化の中心的な位置を占めるようになった。

 このような変化は、ロナルド・レーガンが市場経済に信頼を寄せ、それが国民に伝播した時期と重なったのかもしれない。あるいは、401Kなど自己責任型の年金運用を機に、アメリカ国民全員が、にわか「証券アナリスト化」したことに起因するかもしれない。

 いずれにせよ、自分たちの夢や希望を託したビジネスがいかに展開されていくかを観察しているうちに、企業リーダーたちは人々の憧れの的となった。ある業界ウォッチャーは、企業リーダーたちの権勢と神秘性を中世におけるローマ教皇になぞらえたほどだ。

 なかでもウェルチほどメディアを引きつけたCEOはいない。たしかに、ウェルチのゴルフ仲間のウォレン・バフェットやビル・ゲイツにも関心は集まった。だが、どちらも厳密な意味でビジネスマンとして有名なのではない。一般的には、バフェットは投資家のなかの投資家、ゲイツは卓越したテクノロジスト(科学技術者)兼起業家と見られている。

 ウェルチはアメリカ的ビジネス──熾烈な競争、結果を出すことへの執着、成長・発展への飽くなき探求──を体現した。だからこそ、とりわけビジネスマンがこの男に魅せられた。