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企業経営におけるブランドの役割
今日、ブランドは企業が保有する資産のなかで、最も価値のある資産の一つと位置づけられるだろう。最近行われたある調査では、S&P500採用銘柄の株式時価総額のうち、ブランド価値の占める割合は約2割にも達しているとの推計結果が出ている。
しかし、ブランドの価値評価およびブランド・マネジメントについての確固たる枠組みは、これまで構築されてこなかった。
また、ブランドを資産としてバランスシート(貸借対照表)に計上することを、会計規則で認めている国はほとんどない。理由は、企業の資産からブランドだけを分離することは困難であり、その計上は信頼性の点から問題があるというものである。
そのほか多くの無形資産についても、価値を測定するための客観的で信頼性のある手法が確立されていないことや、流動性の高い市場がないことを理由に、バランスシートへの計上は認められていない。
このような会計上の扱いにもかかわらず、ブランドを始めとする無形資産が、企業の業績に対して重要な役割を果たしているという認識は、一般的なものとなってきている。
S&P500採用銘柄を例に取ると、ここ10年で純資産価値(簿価)と株式時価総額との差は拡大してきている。この差はすなわち、バランスシートに計上されていない無形資産の重要性が高まっていることを示している。その原動力として、次の2つが挙げられる。
第1は、知識主導型経済への移行である。同経済においては、有形資産よりも技術や人的資源などの無形資産が付加価値を生み出す源となる。医薬品事業やソフトウエア事業などは、その典型である。
第2の要因は、全産業にわたっての生産能力の過剰である。こうした環境下では、消費者は多くの選択肢のなかから購入商品を選ぶことになり、彼らに特別の思い入れを持たせる製品・サービスを提供できる企業だけが高く評価される。そのような差別化を図るうえでカギを握るのが、ブランドである。