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創造性に枠を設けない
だれも必要としないものをつくって売る。そんな会社を経営したい人間がいるとしたら、よほど酔狂な人物に違いない。
しかし、これが世界最大の高級品ブランド帝国、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下LVMH)となれば話は別だ。毎年の莫大な──正確には2000年に100億ドル──売上げは、日々の暮らしに役立たないが、夢を叶える品々から創出される。
しかもその夢はけっして安いものではない。1985年もののドン ペリニヨン・ロゼ・シャンパンのマグナム・ボトルは925ドル前後、ジバンシイのドレスは1万5000ドル、タグ・ホイヤーの最高級腕時計に至っては5万8000ドル近い。いずれも、なくても事足りるにもかかわらず、だれもがほしがるものである。
そういう気持ちを駆り立てるのが、LVMH社長ベルナール・アルノーだ。52歳、辣腕の事業家で、世界中のマスコミから「ファッション界の教祖」ともてはやされている。アルノーはつぶれかけていた小さな衣料メーカーを、15年を費やして世界で最もパワフルなブランド50余りを擁する一大コングロマリットに育て上げた。
フランスの調査会社ジャック・シャインによると、LVMHの2001年の総売上高は110億ドル、同社の時価総額は約270億ドルに達する見込みである。
もちろん、アルノーとてこれまで過ちを犯さなかったわけではない。ネット・ビジネスに対する個人的な投資のなかには失敗したものもある。だが、利益と成長を生み出す創造性のマネジメントにかけては、依然として並ぶ者なしとの評判を保っている。
毎年の売上げの約15%を新製品が占めており、なかには営業利益率が47%に上るものもある(表「ハウス・オブ・アルノー」を参照)。