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戦略的ブランド経営のフレーム
マーケティングの分野で発展してきたブランド論において、戦略的ブランド経営という言葉が、ブランド・エクイティの構築や管理測定をしていくためのマーケティング活動の計画や実践ととらえられて久しい。
しかし、企業活動の一機能としてのマーケティングに限定された取り組みからは、その場しのぎの戦術的な発想しか生まれない。特に昨今のような厳しい経営環境のなかでは、ブランドを持続的な競争優位の源泉にすることはきわめて困難になるだろう。
無形資産としてのブランドの価値は、組織の文化や価値観といった資源をベースに生み出される。それは、事業戦略を通して顧客に提供されることによって企業に利益をもたらしたり、マーケティング活動の効果を上げることによって費用を削減したりする。言い換えれば、ブランド価値が生み出され、それが活用されて認識される背景には、組織文化と事業戦略があるということである。
これらは経営全般に関わる要素であり、従来のマーケティングの領域を超えている。
筆者らが提唱する戦略ブランド経営は、図1「戦略的ブランド経営のフレーム」に示されているように、組織文化と事業戦略、そしてブランド戦略の3つの要素からなっている。
さらにブランド戦略は、ブランド・アイデンティティとブランド体系という2つの要素に分けることができる。これらの要素はダイナミックに一貫したものであるべきで、互いにシナジーを持っていることが望ましい。一つひとつ、見ていこう。
組織文化とブランド・アイデンティティの関係
まず、ブランド戦略の一つの要素であるブランド・アイデンティティとは、企業がブランドに表現させたいことを明確に表したもので、理想的な連想の集合とでも言うべきものである。アイデンティティとなる連想を明確化し、精緻化していくプロセスからブランドを戦略的に構築していくことが可能となるため、これをブランド戦略の重要な要素と考える。