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派手さはないが効果のある、もの静かなリーダーシップ
偉大なリーダー、とりわけ「モラル・リーダー」(moral leaders)の物語は、多くの人に愛される。
マーチン・ルーサー・キング牧師しかり、マザー・テレサ、ガンジーしかり。我々は、彼らをロール・モデルとして崇め、その偉業を称える。そして、彼らこそ、倫理に基づく崇高な行動規範の体現者であると賛美する。
本当にそうだろうか、と問おうとは思わない。倫理に基づく行動の価値に、疑義を差し挟むつもりは毛頭ないからだ。ただ、企業倫理の専門家としての経験から気づいたことが一つある。ビジネスの世界では、最も有能なモラル・リーダーは、モラリティと俗受けするヒロイズムとの間に、きっぱりと一線を引いているということだ。
彼らは、スポットライトを浴びて悪を打ち負かす正義のチャンピオンではないし、そうなりたいとも思っていない。また、大がかりな倫理的十字軍の先頭に立つわけでもない。
彼らは辛抱強く、慎重に、少しずつだが着実に前進する。職場で不正を正す、あるいは防ぐ。それらは目立たないように行われ、多くの場合、犠牲者を出すこともない。
私は、こうした人々を「もの静かなリーダー」(quiet leaders)と呼ぶ。その理由は、彼らの控えめな慎み深さこそが、並み外れた成果の主要因と考えるからだ。彼らのやり方は、時間がかかるように思われるかもしれない。
しかし、多くの難問を解決するのは「小さな努力」の積み重ねにほかならないことを考えれば、そうしたやり方こそ企業、ひいては世界をよりよくするいちばんの近道だといってよい。
4年間の調査を通じて、もの静かなリーダーが自らをどう見つめ、倫理的な問題をどうとらえ、そしてどのように効果的な決断を下してきたのか理解しようと努めてきた。