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戦略計画と予算の間には、驚くような乖離がある
CEOは常に「戦略計画と予算を連動させる」ことを求められる。しかし、筆者は長年にわたり、両者の間に驚くような乖離が存在することを目の当たりにしてきた。戦略と予算の整合性は、効果的な経営の証と喧伝されている。理論上は、たしかにそうだ。戦略的なアイデアは、その財務的な影響を分析することで検証できる。たとえば、サプライヤーを変更したら収益とコストはどのように変わるか。従業員のスキルを向上させたら、最終利益にどう反映されるか。
しかし、現実には、両者を整然と結びつけることは難しい。その理由は、戦略計画と予算が互換性のない枠組みに基づいて構築されているからだ。両者は同じ言語を話していない。予算は財務予測とコスト管理を重視して、収入と支出のカテゴリーに沿って構造化される。一方、戦略計画は、市場機会、価値提案、企業能力など、策定者が選ぶ任意の要素を中心に構造化される。
その結果、意思疎通に齟齬が生じ、優先順位が混乱して、リーダーは暗闇を手探りで進むことになる。この不整合は混乱を生み、実行力を弱め、内部対立を助長する。
たとえば、戦略チームは長期的なデジタル構想のための資金を期待しているが、年度内に測定可能なリターンを求める財務チームと衝突するかもしれない。中間管理職は財務部門のコスト抑制の指示に従うべきか、戦略部門からのイノベーションの要求に従うべきか、迷うかもしれない。さらに、経営陣は自分たちが決断しなければならないトレードオフを把握できなくなるおそれがある。
そこで本稿では、戦略計画と予算を協調的に機能させて、戦略的意思決定の財務的な影響を適切に評価できるようにするための4つのステップを紹介する。
ステップ1:戦略への取り組みを見直す
戦略は、あらゆる計画の絶対的な基盤だ。これを正しく構築できなければ、予算などのようにその上に築くものは、ことごとく崩壊する運命に陥る。予算は戦略の枠組みに基づいて、つまり、戦略と同じ概念体系で構築されなければならない。
では、戦略計画が戦略的でない場合はどうだろうか。たとえば、生産、財務、人事など内部部門を中心に構成されている戦略計画は、組織のポジショニングを示す一連の主張ではなく、詳細な「やることリスト」に変質してしまう。そのような計画は成功しない。したがって、予算設計やその次のステップに着手する前に、まず戦略計画を見直し、会社が依存する主要なステークホルダーを中心に再構築する必要がある。
主要なステークホルダーを特定するには、その存在が組織のパフォーマンスに根本的な影響を与えるかどうかを考える。彼らがいなくても組織は存続できるか、簡単に代替できるか。自社がそのステークホルダーから得たいものを明確に理解することも重要だ。あるいは、そのステークホルダーとの関係をそもそも望んでいるだろうか。