戦略計画と予算を連動させる4つのステップ
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サマリー:多くの企業において、戦略計画と予算の間には驚くような乖離が存在している。本来、連動することが求められる両者は、なぜそのような状態に陥っているのか。それは、互換性のない枠組みによって、それぞれが構築されてしまっているためだ。本稿では、この問題を解決するため、戦略と予算を主要なステークホルダーという共通の軸で再構築し、協調的に機能させるための具体的な4つのステップを紹介する。

戦略計画と予算の間には、驚くような乖離がある

 CEOは常に「戦略計画と予算を連動させる」ことを求められる。しかし、筆者は長年にわたり、両者の間に驚くような乖離が存在することを目の当たりにしてきた。戦略と予算の整合性は、効果的な経営の証と喧伝されている。理論上は、たしかにそうだ。戦略的なアイデアは、その財務的な影響を分析することで検証できる。たとえば、サプライヤーを変更したら収益とコストはどのように変わるか。従業員のスキルを向上させたら、最終利益にどう反映されるか。

 しかし、現実には、両者を整然と結びつけることは難しい。その理由は、戦略計画と予算が互換性のない枠組みに基づいて構築されているからだ。両者は同じ言語を話していない。予算は財務予測とコスト管理を重視して、収入と支出のカテゴリーに沿って構造化される。一方、戦略計画は、市場機会、価値提案、企業能力など、策定者が選ぶ任意の要素を中心に構造化される。

 その結果、意思疎通に齟齬が生じ、優先順位が混乱して、リーダーは暗闇を手探りで進むことになる。この不整合は混乱を生み、実行力を弱め、内部対立を助長する。

 たとえば、戦略チームは長期的なデジタル構想のための資金を期待しているが、年度内に測定可能なリターンを求める財務チームと衝突するかもしれない。中間管理職は財務部門のコスト抑制の指示に従うべきか、戦略部門からのイノベーションの要求に従うべきか、迷うかもしれない。さらに、経営陣は自分たちが決断しなければならないトレードオフを把握できなくなるおそれがある。

 そこで本稿では、戦略計画と予算を協調的に機能させて、戦略的意思決定の財務的な影響を適切に評価できるようにするための4つのステップを紹介する。

ステップ1:戦略への取り組みを見直す

 戦略は、あらゆる計画の絶対的な基盤だ。これを正しく構築できなければ、予算などのようにその上に築くものは、ことごとく崩壊する運命に陥る。予算は戦略の枠組みに基づいて、つまり、戦略と同じ概念体系で構築されなければならない。

 では、戦略計画が戦略的でない場合はどうだろうか。たとえば、生産、財務、人事など内部部門を中心に構成されている戦略計画は、組織のポジショニングを示す一連の主張ではなく、詳細な「やることリスト」に変質してしまう。そのような計画は成功しない。したがって、予算設計やその次のステップに着手する前に、まず戦略計画を見直し、会社が依存する主要なステークホルダーを中心に再構築する必要がある。

 主要なステークホルダーを特定するには、その存在が組織のパフォーマンスに根本的な影響を与えるかどうかを考える。彼らがいなくても組織は存続できるか、簡単に代替できるか。自社がそのステークホルダーから得たいものを明確に理解することも重要だ。あるいは、そのステークホルダーとの関係をそもそも望んでいるだろうか。

 企業における主要なステークホルダーは多くの場合、顧客、サプライヤー、従業員、株主、地域社会の5つで、その一部かすべてが含まれる。これらのステークホルダーが計画の骨格を形成しなければならない。

 見直しの一環として、会社はこれらのステークホルダーからそれぞれ何を得たいのか、そして、彼らは会社に何を求めているのかを定量化する。それにはいくつかの手順がある。

 たとえば、会社は顧客から収益を得たい。一方で顧客は、品質の高い製品、カスタマーサービス、競争力のある価格などさまざまなものを求めている。これらはそれぞれコストを伴う。したがって、戦略計画に取り入れる指標の一つは収益であり、収益について時間軸に沿った目標を設定する必要がある。従業員に関しては、高い定着率、エンゲージメント、生産性を会社は求めるだろう。サプライヤーについては取引条件の改善や信頼性の向上を目標とするかもしれない。

 このようにステークホルダーごとの成果を軸に戦略計画を構築することで、財務パフォーマンスに直結する戦略基盤が形成される。同時に透明性も高まり、組織内の全員が、自分たちは誰にどのような影響を与えようとしているのかを明確に理解できる。

 次のステップでは、運営計画、特に予算において、同じように見直しをする。

ステップ2:運営予算を点検する

 通常、運営予算は「勘定科目」に分類され、各項目は「収益」または「費用」に属する。筆者の手元にある予算書には、費用の項目として「材料・消耗品」「間接労務費」「従業員福利厚生」「光熱費」「広告費」「保険料」などが記載されている。

 CEOの戦略チームにとって有益な作業は、これらの費用カテゴリーを精査することだ。すると、それぞれの項目が主要なステークホルダーに結びついていることがわかる。たとえば「材料・消耗品」はサプライヤーに、「間接労務費」や「従業員福利厚生費」は従業員にひもづけられる。

 ここで重要な洞察は、予算にはステークホルダーとの関係性が内在しており、それを掘り起こすだけでよいということだ。この作業を通じて、自分たちの戦略とステークホルダーのつながりがより明確になって、次のステップへと進める。

ステップ3:戦略的議論のために予算を再編成する

 予算がそのままの状態では、戦略的に意味を成さない。新しいステークホルダー中心の戦略計画と、従来の費用カテゴリーを中心とする予算を並べれば、まるで水と油のようだ。

 そこで、予算の収益と支出を、ステークホルダーのカテゴリーに従って再分類する。これは戦略チームと大型スクリーンを共有して、合意を得ながら進めるとよい。まず、収益を「顧客」ごとに分類する。これは簡単だ。次に、さまざまな支出を、先ほど説明したように主要なステークホルダーごとに振り分ける。

 その際、例外にとらわれないこと。複数のカテゴリーにまたがる支出や、分類が難しいものもある。たとえば「保険」は、従業員、顧客、別のステークホルダーのどれに属するだろうか。明確に分けられない時は、「保険」のカテゴリーを細分化して議論する必要がある。労災保険に関連するものなら従業員に属し、製品の性能に関する会社の賠償責任保険であれば顧客に属する。こうした議論は問題を明確にするだけでなく、むしろ、予算の支出カテゴリーを再設計して、より明確にするという効果をもたらしうる。

 ただし、この再分類はあくまでも作業の一つだ。経理部門にシステムの変更を指示するものではない。彼らにとって現行のシステムが機能しているなら、そのままでよい。

ステップ4:戦略計画と予算を統合する

 いよいよ成果が表れる段階だ。戦略計画と予算が、同じステークホルダー体系に基づいて構築された。これにより、多くの経営者が苦労してきた課題、すなわち、戦略的意思決定の財務的な影響や、財務的意思決定の戦略的な意味合いを評価できるようになる。

 たとえば、戦略計画で、市場シェア拡大のために価格引き下げを掲げているとしよう。その変更は、顧客関連の収益に影響を及ぼすものとしてスプレッドシートに反映され、最終的な利益への影響が自動的に計算される。あるいは、より有利な条件や迅速な納入を期待してサプライヤーとの関係を深めようとする場合、それはサプライヤー関連の支出項目に表れる。従業員の福利厚生を拡充してエンゲージメントを高めたい時は、従業員コストへの影響を注視して、離職率の改善やパフォーマンスの向上といった効果とのトレードオフをモデル化できる。

 このアプローチは、戦略計画と予算の関連性を明確にするだけでなく、経営陣の議論の方向性も変える。筆者の経験からも、このプロセスが経営陣全体を結束させることがわかった。

 多くの組織では、経理や財務の専門家は戦略をやや「学術的」と見なし、関心を失いがちだ。彼らの基盤は予算、予測、差異分析にある。また、人事のような機能は「ソフト」とされ、自分たちの意思決定が財務に及ぼす影響を理解できないと思われがちだ。一方で、人事や業務部門は、予算作成を狭義の財務活動と捉え、人材管理、士気、サービス品質などとの関連性を見落としていて、これらの要素が離職率の上昇など定量化できる支出に及ぼす影響を把握していないように映る。

 ここで説明してきたように、戦略計画と予算をステークホルダーを中心に構築することで、すべての関係者が共通の枠組みで参照することができ、すべての意見が重要視される。採用、サプライヤー契約、製品価格設定、地域社会への投資などに関する意思決定において、各部門は戦略的意図と財務的影響の両面から意見を述べることができる。

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 長い間、戦略の策定と予算の編成は別々の世界で行われていた。結果として生じた空白は、根拠の薄い推測や直感、後付けの帳尻合わせで埋められてきた。いまこそ枠組みを再構築すべきだ。戦略計画と予算の両方を、同じ主要なステークホルダーのカテゴリーに基づいて構造化することで、強力なフィードバックループが形成される。戦略は実行可能になり、予算は意味を持つ。そして、経営陣の議論はすれ違わなくなる。

 こうしたアプローチは戦略を雲の上から引き下ろし、財務の仕組みと結びつける。そして、戦略は「絵に描いた餅」ではなく、現実の選択を導く生きたプロセスになるのだ。


"How to Sync Your Budget with a Strategic Plan," HBR.org, August 18, 2025.