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職場における「共感」を軽視していないか
私たちは今日、リーダーにかつてなく多くのことを期待している。強い共感力を発揮してほしいという期待もその一つだ。しかし、常にそうだったわけではない。むしろ最近まで、多くの人はリーダーの共感を強みではなく弱みと捉えていた。リーダーたるもの、感情の理解を示すべきではない、厳格であらねばならない、とされてきたのだ。
共感について長年研究しているスタンフォード大学の心理学者ジャミール・ザキは、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)での論考「共感力を無理なく発揮し続ける3つの方策」の中で、この考え方を覆した。「共感は弱みではなく、職場で大きな力を発揮する」と彼は論じ、多数の研究による証拠を挙げている。
「共感的な組織で働く従業員のほうが仕事への満足度が高く、創造的なリスクを取りやすく、同僚を手助けするようだ。深刻なバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥ったり、ストレスによる身体症状が出たりする確率がはるかに低く、逆境に直面しても立ち直りやすい。離職率も低い。2022年に米国の1万5000人以上の従業員を対象にしたギャラップの調査によると、気遣いや思いやりがある組織に勤務する従業員のほうが、積極的に新しい職探しをする率がはるかに低い」
ザキが指摘する問題は、リーダーは共感的になることで非常に多くのエネルギーを消費し、注意しなければ自分自身が燃え尽きてしまうことだ。ザキは論考の中で心理学と神経科学からの学びをもとに、「持続可能な共感」と彼が呼ぶものを実践することによってバーンアウトを防ぐ方法について、リーダーに助言を提供した。
この論考が発表されてから1年半の間に、風潮が幾分変わってきた。一部の大企業のリーダーたちはいまや、従業員基盤の縮小とオフィス復帰の義務化に成功したことを誇示している。そして、かつて人間にしかできないとされてきた感情労働を担う共感的なAIエージェントを、企業はどうすれば最も効果的に配備できるかについて各所で語られることが増えている。
こうした風潮は、共感性の乏しいリーダーシップスタイルへの移行を示唆しているのか。それとも、リーダーが共感力の発揮を要する場面でAIに頼るようになることを意味しているのだろうか。この点を含め、AI時代における共感をめぐるもろもろの疑問への答えを得るために、ザキの考えを尋ねた。
* * *
持続可能な共感に関する論考を本誌に寄稿されてから、18カ月以上が経ちました。どのような反響がありましたか。
私が何よりも驚いたのは、読者の方々が語った安堵感です。他者を率いることは恩恵であり名誉なことですから、その権限を持つ人はしばしば、自分の感情について不満を言うことは恩知らずで無神経な行為だと感じてしまいます。しかしリーダーにも感情はあり、部下をより強く気遣うほど燃え尽きるおそれが高まります。多くの読者がこの記事に自分を重ね合わせ、自分だけではないと知って安心し、困難な時期に「持続可能な共感」の方法を学べたことをさらに喜んでくれました。
論考を書かれて以降、何が変わりましたか。