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感情をうまく扱うための4つの視点
職場における感情の価値は、何十年にもわたる研究で証明されてきた。それにもかかわらず、リーダーが活用できるリソースのうち、感情は最も過小評価されている(そして誤解されている)ものの一つだ。いまだに感情は、集中することを邪魔したり、判断を曇らせたり、優れた意思決定を妨げたりすると考えるリーダーが実に多い。いわゆる「ネガティブな感情」が人間関係を傷つけるとか、感情を表に出す人間は弱いかプロフェッショナルらしくないと考えるリーダーもいる。
こうした思い込みや誤解は無害に見えるかもしれないが、実のところ、感情を抑え込むように促すことで、個人と組織に大きな負担が生じ、リーダーシップの有効性とチームのパフォーマンスにダメージを与える。感情を無視したり抑えたりすると、やがて燃え尽き症候群(バーンアウト)になったり、心身の健康を害したり、職場の士気を低下させたり、チームワークを妨げたり、業績にまで影響を与えるおそれがある。
現代の職場では、チームワークが重視され、さまざまな感情が入り混じる。したがって、感情をきちんと理解し、管理するのは、もはや選択の余地のない当然のことだ。感情は、あらゆるやり取りの中核を成す。私たちを人間的に結びつけ、誰かを説得したり影響を与えたりする強力なツールとなり、周囲の状況を知る重要な手掛かりとなる。感情を無視すれば、貴重な機会を逃し、現実的な問題をもたらすことも多い。かつてはリーダーの仕事だった分析作業は、AIが担うようになってきたが、感情的知性(EI)は依然として極めて人間的なスキルであると同時に、現代の複雑な職場を切り抜けるうえで不可欠なスキルでもある。
それにもかかわらず、ほとんどのリーダーは感情を扱う訓練を受けていない。部下たちの感情を扱うのは気まずく、リスクがあり、あるいは「立ち入るべきでない」とさえ感じている。実際、リーダー向けのEQ能力開発支援プログラムは多数あるが、行きすぎたものも多い。応用行動に焦点を絞っていて、共感を示す方法や対立を処理する方法を教えようとするのだ。だが、真のEIに台本はなく、感情に関するデータを認識し、探り、戦略的に活用することに基づいている。
本稿では、リーダーが感情に関するスキルを高め、みずからのウェルビーイングとリーダーとしての有効性を向上させるために、すぐに活用できる4つの簡単な方法を紹介しよう。
気づく
感情が持つ貴重なデータを引き出し、活用するための第一歩は、感情に気づくことだ。まずは、すでに存在するが見落とされがちな、小さな手掛かりに注目しよう。
感情は、自分で認識する前に、身体や行動やエネルギーに表れることが多い。仕事をしながら、自分の身体感覚に意識を向けてみよう。いつの間にか歯を食いしばっていたり、心拍が速くなったり、肩に力が入っていたりすることに気づいたら、それはストレスや不安、怒りの初期の症状かもしれない。さらに、自分の行動にも意識を向けてみよう。いつもより口数が増えたり、あるいは自分の殻にこもったりしていないか。仕事に没頭しているか、それとも先延ばしにしていないか。こうした問いに対する答えは、表面に表れていない感情を示している可能性がある。そして、自分のエネルギーに注目しよう。突然落ち込んだり、予期せず力がみなぎったりするのは、見えない感情の表れかもしれない。