官僚主義がこびりついた組織をどう変革するか
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サマリー:世界各地で富と所得の不平等が拡大し、その恩恵の大半は最も裕福な層に偏っている。企業利益や生産性が伸び続ける一方で賃金は停滞し、多くの労働者は自分たちが取り残されていると感じている。こうした格差の背景には、従業員の創造性や主体性を発揮しにくい官僚的な組織構造があり、エンゲージメントの低下を招いている。本稿では、官僚主義が生む問題と、人の力を解き放つ組織への転換について探っていく。

 ゲイリー・ハメルとミシェル・ザニーニは、共著書『ヒューマノクラシー:「人」が中心の組織をつくる』の新しい改訂・増補版で、官僚主義がいかに創意工夫とイノベーションを妨げるかをはっきりと描き出し、いつものように、データに基づいてマネジメントを再構築する必要性を論じている。以下はその抜粋である。

官僚主義は創意工夫とイノベーションを妨げる

 世界各地で、持つ者と持たざる者との格差は拡大しつつある。米国の世帯純資産は、主に好調な株式市場のおかげで、1989年から2024年までに134兆ドル増加した。この増分のうち68%は、資産額の評価における米国世帯の最上位10%が取得した。増分の30%は続く上位40%の世帯が手に入れ、下位50%の世帯が得たのは増分のわずか2%だった。米国の不平等は特に(悪)名高いが、ほとんどの国で、大きな富の格差は存在している。

 当然ながら、何百万人もの労働者階級の人々は、自分たちが取り残されていると感じている。このデータをさらに掘り下げてみよう。

所得の不平等の拡大

 OECD諸国全体において、所得格差が過去50年で最も大きくなっている。1979年から2019年にかけて、米国の最上位10%の給与所得者の所得は、最下位10%の給与所得者の所得に比べて9倍のスピードで増加した。パンデミック後、労働者不足と政府による移転支出が低所得層の所得を押し上げたとはいえ、この増加は一過性のものになる可能性が高い。

CEO報酬の膨張

 1960年代および1970年代には、大企業のCEOと一般従業員の報酬の比率は30対1未満だったが、1998年以降は平均して300対1を超えている。