セミリタイアしたトップの介入に翻弄されず、組織を安定させる方法
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サマリー:実務から退きつつも強大な権限を保持し続ける「セミリタイア状態のCEO」による弊害が浮上している。彼らの一貫性のない介入は、組織に混乱を招き意思決定を停滞させる要因となる。経営幹部はCEOを非難するのではなく、好奇心を持って向き合い、組織の安定性を自ら確保する役割を担わねばならない。本稿では、こうした予測不能なリーダーと協働し、組織を守るための4つの戦略を紹介する。

セミリタイアしたトップが組織を混乱させる

 マイクロマネジメントに走るリーダーの問題が、経営幹部の間で話題になることは多い。しかし近年、それと同じくらいに組織を混乱させる動きが浮上している。半ば引退しているセミリタイア状態にもかかわらず、依然として強大な権限を握っているCEOの存在だ。

 ベビーブーマー世代が過去のどの世代よりも長く働き、長寿となる中で、こうしたケースはいちだんと一般的になってきている。多くの人が会社と強固な結びつきを持ち、自分のアイデンティティやレガシーは仕事と切っても切り離せない関係だと考えている。だが、CEOが一貫性のない形でビジネスに口を出すと、その結果として生じる曖昧さを組織全体が吸収しなければならなくなる。意思決定が遅れ、Cスイート内に権力の中心が生まれ、リーダーたちは自分に主導権があると言われながら、一方で日々、その権限を奪われている。

 筆者のクライアントで、あるメーカーの最高収益責任者(CRO)を務める「サム」も、そうした状況の渦中にあった。彼の会社のCEOは毎年夏に2カ月間休暇を取り、さらに勤務期間中も週に2~3日しか働かないスケジュールを維持している。それにもかかわらず、彼は大小を問わずあらゆる案件について自分が最終判断を下したいと考えている。しかも、いつ、どのように関与するのかは、予測が不可能だ。取締役レベルの職務権限規程をみずから承認したがることもあれば、重要な戦略的意思決定を蒸し返したり、方向転換させたりすることもある。経営幹部チームは計画立案を続けているが、ひとたびCEOが介入して方向を転換すれば、自分たちの計画はひっくり返されるだろうと思っている。

 筆者はエグゼクティブコーチやチームコーチとして、この手の状況、つまり引退生活の自由を享受しつつ、仕事とのつながりも維持したいと願うシニアリーダーの問題を頻繁に目にしている。社内を安定させ、不要な混乱からチームを守り、CEOの役割や関与の度合いが定まらない状況下でも、着実かつ信頼される存在となるためにどうすべきか。本稿では、4つの戦略を紹介する。

1. 判断を下さず、好奇心を持って状況に向き合う

 CEOの関与の仕方が一貫していないと、不満が募りやすい。完全にコミットするわけでも、完全に身を引くわけでもないという状況では、関与のパターンを予測できず、そのしわ寄せが社内の他の部門に及んでしまう。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、CEOの関与の形が不明瞭だと、戦略的な明確さが損なわれ、実行のスピードが遅くなるという。ただし、こうした状況に批判的な態度で対応すると、本来必要な対話そのものが閉ざされてしまうことが多い。

 組織行動学者のクリス・アージリスとドナルド・ショーンが開発した意思決定ツール「推論のはしご」によれば、人は観察した事実から瞬時に飛躍して、それがなぜ起きたのかに関する自分なりの物語を組み立ててしまう。たとえば、CEOが戦略会議を欠席した一方で深夜にメールを送ってきた場合、「自分たちを信用していない」「我々の意思決定を攻撃しようとしている」と考えてしまう、という具合だ。

 だが、これは事実への反応ではなく、みずからがつくった物語への反応であり、防御的な対応や距離を取る態度、静かな憤りといった形で表れることが多い。