-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
最良のリーダーは、AIについて断定的な語り方をしない
ポーランドの内視鏡専門医たちががんの検出にAIを利用し始めたところ、精度が向上した。ところが、AIを使わない検査における彼らのパフォーマンスは低下した。学生たちがSAT(大学進学適性試験)形式の小論文の作成にAIを用いたところ、最初は創造性が急上昇した。しかし、AIが生成したアイデアをもとに書き始めたグループは、アルファ波の活動(創造的フローの指標)が低下し、「同じような言葉と発想に収れんする傾向」を示し、彼らの「成果物は互いに非常に似通っていた」という。また、欧州20カ国を対象とした2025年の研究では、自動化の度合いが高い職に就いている労働者は、仕事が技術的には楽になっても、働く意義の減退、自律性の低下、ストレスの増加を報告している。
総合すると、これらの研究は、仕事におけるAIの利用に伴う多くの二面性を捉えている。単調な労働を軽減する同じツールが、仕事に意義をもたらす挑戦的な摩擦をも取り除く可能性がある。このようなツールは仕事を楽にしてくれる一方で、スキルと満足感の向上につながる苦労を削ぎ落してしまうのだ。
筆者らは、こうした相反する緊張関係が実際の組織の中でどのように現れているのか、そして賢明なリーダーがそれらに対処するためのシステムとガードレールをどう築いているのかを知りたいと考えた。過剰な期待と曖昧で中身のない言説が渦巻く中、何が実際に奏功しているのかを突き止めることを筆者らは目指した。自他の組織で職場へのAI導入を支援している人や、
結果は「AIトランスフォーメーション100」に結実した。AIがどのように職場でのポジティブな側面を強化し、ネガティブな側面を抑制する可能性があるのかに関する100のアイデアを、注釈つきでまとめたリストである。これはチームによる知識の発見、知的活動、仕事の自動化を支援するエンタープライズAIプラットフォームのグリーンが新たに設立した、ワークAIインスティテュートにおける筆者らの最初のプロジェクトである。目標は、実験と実行、過剰な期待と具体的な変革の峻別を始めること、およびAIがどこで進歩を後押しし、どこで行き詰まり、どこでひそかに(または明らかに)逆効果を生んでいるのかを理解することであった。
AIトランスフォーメーション100の作成に当たり集めた研究と事例には、多くのノイズと矛盾があった。とはいえ、ある傾向が際立っている。最良のリーダーは、AIについて断定的な語り方をしない。AIを救世主とも妨害者とも扱わない。好奇心を保ちつつ、やや懐疑的でもある。自分たちは行きすぎなのか、それとも不十分なのかと自問する。本調査を通じて、5つの緊張関係が何度も浮かび上がった。いずれもAIをめぐるバランスの問題であり、すべてのリーダーが適切に対処する必要がある。
緊張関係1:専門家 vs 初心者
AIは、誰が専門家になれるのかをめぐる基準を大きく揺るがしている。コーディング、データ分析、法律文書の草案作成といった、かつて何年もの訓練が必要とされた仕事はいまや、適切なプロンプトさえあればほぼ誰にでもできる。専門家と初心者の境界線が曖昧になっているのだ。
この変化はチャンスとリスクの両方をもたらす。貢献できる人材の幅が広がる一方で、AIへの習熟と、特定の技能や対象分野への精通が混同されやすくなる。課題は専門家と初心者のどちらかを選ぶことではなく、どの場面でそれぞれに頼ればよいのかを見極めることだ。
専門家は、一方では厳密さと深みをもたらす。彼らは失敗、エッジケース(極端な条件下で生じうる問題や状況)、物事がうまく機能しない理由を目にしてきた。その知識は不可欠だが、創造性を拙速に潰してしまうこともある。デュオリンゴの取締役会メンバーを務めるジョン・リリーによれば、チェスの経験がまったくない2人の非エンジニアがAIを活用し、実際にプレーして学ぶチェス講座のプロトタイプをわずか4カ月で作成した。そのペースはデュオリンゴ内の他の取り組みを上回ったという。「専門家を参加させるのが早すぎると、彼らは奏功しないあらゆる理由を並べ立てます」とリリーは語った。「AIのおかげで非エンジニアは、何が可能かを素早く示すことができたのです」。またグーグルでは、チームは製品要件を詳しく記載した長い文書から、「プロトタイプ優先」のアプローチに移行している。複数の内部関係者によると、AIを活用した「バイブコーディング」によって、いまでは提案書を作成する前に実際に動くデモをつくり、イテレーションを速め、優れたアイデアが委員会で潰えるのを防いでいるという。
しかし、反対の方向に振りすぎても新たなリスクを招く。第一線のリーダーと研究者の両方が筆者らに強調したように、初心者がAIを使って専門知識を模倣すると、「AIスロップ」──つまり説得力があるように見えるが、精査すると綻びが出るような成果物を生む可能性がある。ソフトウェア開発者の就職の成否を調べたスタンフォード大学の研究は、企業がこうしたお粗末な仕事に対処するために、専門家を頼りにしていることを示唆している。初心者レベルの開発者の採用は減少している一方で、上級エンジニアの需要は高まり続けている。AIはまずまずの草案を生成できても、ベテラン開発者の判断力、洗練度やシステム思考は再現できない。
初心者の想像力を活用しつつ、AIスロップの氾濫を防ぐには、以下を試してみよう。







