生成AI 効率化から差別化へ
サマリー:『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)2026年3月号の特集は「生成AI 効率化から差別化へ」です。多くの企業で生成 AI の実装が進んでいますが、その試行錯誤に見合う果実を得るのはそう簡単ではありません。いま問われているのは、自社の強みを磨くためにいかに賢く活用するか、という視点です。そこで2026年3月号の特集では、生成AIを単なる効率化の道具で終わらせず、真の競争優位を築く武器とするための要諦を論じます。

「効率化ツール」のその先へ

 電灯は約40年、電話は35年、テレビは20年。インターネットは14年、SNSは8年。これは革新的テクノロジーが実用化されてから米国社会の人口約25%に普及するまでに要した期間です。では生成AIはというと、その所要期間はわずか1〜2年。ビジネス環境での普及はさらに進んでおり、マッキンゼー・アンド・カンパニーが2025年に105カ国・地域の1993人を対象に実施した調査では、組織内で少なくとも1つの業務で生成AIを活用していると回答した割合は9割近くに上るそうです。

 これほど急速に浸透している生成AIですが、では投資に見合う価値を生み出せているかというと、そこはまだ限定的。日本よりも早く生成AIが社会に浸透している米国でも、企業はいまなお試行錯誤の途上にあるようです。『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)のオンライン版(HBR.org)の記事を読んでいても、生成AIを導入してはみたものの、いまだ収益化の道筋が見えていない企業の葛藤がしばしば描かれています。

 メール文面の提案や資料作成補助といった「業務効率化」のためならば、すでに多くの企業が生成AIを導入しているでしょう。しかし重要なのは、その先にある問いです。生成AIを単なる効率化ツールに終わらせず、自社の強みを磨いて「価値創造」につなげるために、どう活用すべきか。それが今号の特集「生成AI 効率化から差別化へ」の眼目です。

 特集1本目「生成AIの可能性を引き出し、競争優位を確立する方法」では、他社とは異なる自社独自の方法で生成AIを活用する道筋を見極めるうえで有用なフレームワークを提示しています。

 特集2本目「生成AIは『広く浅く』ではなく『狭く深く』実装せよ」は、生成AIによって競争優位を強化するためには、「狭く深い」導入アプローチを採用したほうがなぜ有効なのかを論じています。

 続く特集3本目の「生成AIの導入を成功させる『実験』という手法」は生成AIをやみくもに導入するとかえって生産性の低下を招くおそれがあると警鐘を鳴らし、大規模導入に踏み切る前に、科学的方法に準拠した実験を行って検証することの重要性を説いた論考です。

 また特集4本目「小さな成功体験を重ね、走りながら戦略を進化させる」では、ヤンマーホールディングスのCDO(最高デジタル責任者)を務める奥山博史氏に、生成AIを活用した既存事業の進化や新たな製品・ソリューションの開発について、またこうした新たな業務の担い手となる人材をいかに育成しているのかを聞きました。

 ハルシネーションやセキュリティ上の懸念など、生成AIにはリスクもあります。しかしそれを理由に様子見を決め込んでいては、前へ進むことはできません。積極的に活用し、経験から学ぶこと。行動を積み重ねてこそ、自社ならではの価値創造の道筋が見えてくるはずです。

(編集長 常盤亜由子)