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夢のようなCEOのポジションが悪夢に変わる
ある経験豊富なCEOが、強固なファンダメンタルズを持つと考えられている有名な上場企業のトップのポジションのオファーを受けた。二つ返事で引き受けた彼は、その会社の取締役全員と顔を合わせた。個人的に知っている人も何人かいた。彼は関連業界で長い経験があり、そのポジションがもたらす名声と、自分のスキルや過去の成功を活かしつつ、新たなチャレンジに取り組めることに興奮していた。
ところが、就任からわずか数カ月で、この会社は財政的な圧力にさらされており、予期せぬ逆風にあった時、工夫する余地や柔軟性が乏しいことがわかった。「大事なレースなのに、自分だけスタートラインの400メートル後方がスタート地点だと言われたようなものだった」と、彼はのちに振り返っている。「会社の状態を正確に理解していなかった」
すぐに彼は、取締役会との関係を信頼していたために、そのポジションを引き受ける前にきちんとした分析をしていなかったことに気がついた。有名な取締役や著名な創業者について思い込みを抱いてしまい、その後の混乱に備えることができなかったのだ。
1年半もすると、そのポジションは彼のキャリアで最も厳しいリーダーシップ職となった。膨大な仕事量と大きなストレスにさらされたほか、株主に称賛された合併が株価に反映されなかったために、彼がCEOだった時期、その会社の業績はさえなかったというイメージができてしまった。彼の評判は傷つき、大いに報じられた失敗に家族もストレスにさらされ、彼の次のキャリアの選択肢も狭まった。その会社も時間と、勢いと、市場の信頼を失った。
彼は行く先々で成長を生み出してきたCEOだが、その会社では下向きだった業績の好転を任された。これは彼の専門ではなかったし、会社が最も必要としているものでもなかった。彼が予期していなかった取締役会の複雑な力関係もあった。夢の仕事は悪夢に変わった。
なぜこの問題が重要なのか
このエピソードは珍しいものではない。筆者らは、取締役会やプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資企業がCEOを見つけ、評価し、育成するのを支援する中で、同じようなパターンを何度も見てきた。新しいポジションを引き受けた有能なエグゼクティブが、実は適任者ではなくて、本人も組織も手痛い失敗を被るというパターンだ。
CEO選びは一方的な行為ではなく、明晰性と、率直性、そして一致したビジョンを確保するための共同の努力だ。取締役会とCEO候補の両方が、同じビジョンを持っていなければならない。なぜなら、どちらもその結果に対して責任を負うからだ。米エグゼクティブ紹介大手スペンサースチュアートの分析によると、CEOがプレッシャーを受けて辞任したり、2年以内に退任したりした会社は、2年後、株主総利回りが20%低下する。
だが、CEO候補(特に多くの選択肢があるトップクラスのエグゼクティブ)は、オファーを受け身で引き受けるだけではいけない点は、しばしば見落とされがちだ。そうではなく、オファーの背景を問い質し、思い込みに疑問を投げかけて、そのポジションが本当に自分に合っているかどうかを見極めなければならない。これには、成功の条件と満足の条件の両方を明確に理解し、それが満たされる可能性が高いかどうかを確認することが含まれる。
ここで重要なのは、良いCEOか悪いCEOかではなく、具体的な状況に対して適任かどうかだ。つまり、コンテクストが極めて重要になる。たとえ同じ組織であっても、CEOの役割が同じであることはない。これは、いわゆる再登板したCEOが必ずしも優れた成績を上げるとは限らないことに示されている。かつての成功がその人物の能力を示すこともあるが、コンテクストが変わるとフラストレーションを感じ、よい成績を上げられないリーダーもいる。あるリーダーは、戦略的買収を通じてある会社の輪郭を定義したが、次の段階ではリーンなオペレーションの実現に注力することが求められた。これは彼女が経験したことのある業務ではなかった。重要なのは、これはスキルや経験だけの問題ではなく、個人のモチベーションやサポート体制、企業文化といった幅広い要素が関わってくるという点だ。







