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不確実な未来に向けて行う「戦略的予測」
新しい1年の始まりに、未来を見通せる水晶玉がほしいと思うのは、人間の性質というものだ。この先、どのようなことが私たちを待ち受けていて、どのような影響を及ぼすのか。私たちは、それらを知りたいと思わずにはいられない。
こうした感覚は、不確実性が高まっている時代にはとりわけ強くなる。不確実性が高まる中で有効な予測を行うことが、不可能とは言わないまでも、極めて難しく感じられるからだ。いま客観的に見て世界がどのような状況にあるかに関係なく、少なくとも企業のCEOたちは、世界の不確実性が高まっていると感じている。筆者らが企業の決算報告を分析したところ、2025年には不確実性に関する話題が大幅に増加した。この傾向は、2026年にも弱まる兆候がほとんどない。
筆者らが企業の幹部チームに助言してきた経験から言うと、多くの企業は、不確実な状況に直面した時、言ってみれば目の前の火災を消火しようと焦り、フリーズ状態に陥ったり、直感頼みで行動したりすることが多い。しかし、予測不可能な未来を前にして、これとは異なるアプローチを取る企業も一部にはある。筆者らが500社の企業の幹部たちを対象に行った最近の調査により、予測能力を発揮して不確実性を強みに転換できる企業と、予測能力をうまく活用できない企業の違いを分ける明確なパターンが見えてきた。
筆者らが言うところの「戦略的予測」とは、変化の兆しに目を光らせ、複数の未来のシナリオを検討し、そうしたインサイトに基づいて現在の選択の質を向上させることを目指す筋道だった方法論のことだ。
戦略的予測の歴史は冷戦期における軍部の計画立案に遡るが、1960~70年代にはビジネスの世界でもその方法論が取り入れられるようになった。当時、石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルなどの企業がシナリオプランニングを実践することにより、一つの予測シナリオが実現することにすべてを賭けるのではなく、複数の起こりうるショックに対処するためのリハーサルをするようになったのだ。
今日では、戦略的予測を行うために、新しいシグナルのモニタリングに始まり、ウォーゲーム(図上演習)やシナリオプランニングに至るまで、さまざまな手法が用いられている。こうした予測の能力は、AIの台頭により急速に向上している。
戦略的予測を正しく実践できている企業は、2つの重要な領域で秀でている。一つはプロセスの面だ。リアルタイムと長期の両方の時間軸であらゆる未知の要素に目を配れる環境ができ上がっている。もう一つはマインドセットの面だ。予測能力の高い企業は、リスクマネジメントを行うだけに留まらず、不確実性の高い環境で未来の可能性を見出そうとし、最先端の予測ツールを活用して常にデータをもとに考えている。
予測能力の高い企業は、業種や売上規模、企業の所有形態の枠を越えて存在している。この種の企業は、そうでない企業に比べて、未来に対してより充実した準備ができているだけではない。競合企業との競争で極めて大きな強みを手にしている。予測能力が標準レベルから最高レベルに上昇すると、企業の財務成績が5%上昇するというデータもある。ただし、このような点で後れを取っている企業にも明るい材料はある。取り残されないために実践できる具体的な方策があるのだ。
不確実性を強みに転換する
筆者らの研究によれば、未来予測を実践している企業は多いが、そうした取り組みはほとんどの場合、シンプルで場当たり的なものでしかない。回答者の60%は、主として初歩的な予測手法を用いていると述べている。定性的で断片的な情報に頼っているケースが多い。具体的には、トレンドレポートの類いを読んだり、SWOT分析のシナリオを検討したり、データを常に一覧できるようにするなどして情報を得ている。
それに対し、高度な予測は、データもしくはAIに牽引されて体系的に行われる。機械学習による予測、ウィークシグナル(変化の兆し)や感情の分析、デジタルツイン(訳注/現実世界を仮想空間に再現してシミュレーションする手法)やウォーゲームにより、戦略のストレステストを行うのだ。







