長期を見据えた資本主義

 崩壊寸前にまで至った金融システムとそれに続く大不況は、いまの世代のビジネス・リーダーにとって決定的な問題であっただけでなく、今後もそうあり続けるだろう。いまは最悪の状態から脱したと思われ、ほっと一息つきたい、いつも通りの仕事に戻りたいという気持ちにかられるのはやまやまである。

 しかし、それは許されない。我々はすでにこの3年間で、先進社会である西側と開発途上にある東側の間にある力関係の急変、各国に見られる大衆迎合主義政策の台頭と社会圧力の高まり、世界的なガバナンス・システムのきしみを目の当たりにしてきた。

 経済危機の余波が続くことに伴い、今後は地政学的な国家間対立の激化、国際治安に関する新たな課題、貿易や移住、資源争奪戦による緊張の高まりを感じることになりそうである。しかし、ビジネス・リーダーたちにとってこの危機がもたらした何より深刻なものは、資本主義自体の有効性への疑問である。