分業と経済発展

 1776年に出版されたアダム・スミスの『国富論』には、「今後数世紀の経済発展に、中心的な役割を果たすのは分業化である」という有名な叙述がある。

 現在我々が享受している繁栄は、労働者の専門分化とそれに伴う分業によって、生産性が向上したことでもたらされた。知識労働と通信技術の発達のおかげで分業は次なる段階を迎え、またその性質もこれまでと異なるものになるだろう。我々は、「超分業」(hyperspecialization)という時代の入り口に立っている。このような働き方はこれまでとまったく異なる世界であり、まだよく理解されていない。

 今日の非常に複雑なサプライチェーンを見れば、すでに分業化は究極に達したと考えられるかもしれない。たとえば、ボーイングの〈787ドリームライナー〉の開発プロジェクトは、アウトソーシングの見本として注目を集めたが、想定では滞りなく部品を調達できるはずだったものの、うまくいかず遅れが生じた。しょせん「遠すぎた橋」だったのである。何しろ航空機部品の「主要」サプライヤー・リストだけでも、ウェブには379のリンク先が掲載されているのだ。