業績を停滞させるリーダーがアラインメントで犯す3つの過ち
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サマリー:企業の成長に不可欠な「戦略的アラインメント」。多くの経営幹部がその重要性を認識しながらも、なぜミスアラインメントが頻発し、業績の足を引っ張るのか。調査によると、自社のアラインメントに自信を持つリーダーはわずか7人に1人にすぎない。本稿では、リーダーが陥りがちな3つの過ちを解明し、組織の分断を防いで戦略を確実に実行へと導くための実践的なアプローチを紹介する。

ミスアラインメントにおけるリーダーの問題

 戦略的アラインメント――市場戦略、ケイパビリティ、人材、テクノロジー、組織文化、組織構造、プロセス、システムなど企業の価値を生み出す中核的な要素を注意深く整合させる試み――が不可欠であるという点に異論を唱える経営幹部はまずいない。それ以外の条件が同じであれば、アラインメントに秀でた企業ほど高い業績を挙げる傾向がある。

 それにもかかわらず、ミスアラインメントが広範囲で継続的に発生し、企業のパフォーマンスの足を引っ張っている。リーダーはどのような過ちを犯しているのだろうか。

 この問いに答えるため、筆者は2025年に、主要な業界と地域を網羅する約400人の経営幹部を対象に調査を実施した。結果の分析は現在も続いているが、早い段階で得られた知見の中にも注目に値するものが複数ある。回答者の91%が、戦略的アラインメントがビジネスを成功に導く重要な要因であることに同意したが、その一方で、自社の組織で戦略的アラインメントが取れていると「強く同意」した者は、7人に1人にも満たなかった。つまり、多くのリーダーは問題を認識していながら、それを解決できていないのである。

 このギャップは、企業パフォーマンスにとって重要な意味を持つ。自社は戦略的アラインメントがあると答えた経営幹部は、アラインメントが不十分だと認識している幹部を業績面で上回る可能性がはるかに高かった。自社には戦略的アラインメントがあると「強く同意」した回答者の86%は、財務パフォーマンスの目標を達成した(44%)、あるいは目標を上回った(42%)と報告している。

 同様に、自社は戦略的アラインメントがあると「強く同意」した回答者の56%は、自社の業績が業界平均を上回っていると答えた。これに対し、自社は戦略的アラインメントがあるという点に「強く反対」した回答者の77%は、財務パフォーマンスが目標を下回ったと報告している。

 ここで重要なのは、ひとたびアラインメントにひびが入ると、共通した根強い症状が(頻度の高いものから以下の1~4の順で)現れるという点だ。

1. コラボレーションが崩壊する。サイロが形成され、部門横断的な協働が特に必要となる局面で、それが困難になる。
2. 変革が停滞する。チームが従来の働き方に固執し、抵抗が生じる。
3. 実行力が低下する。組織の中間層が戦略の狙いを汲んで、それを行動に移さなければ、どれほど優れた戦略も勢いを失ってしまう。
4. 信頼が損なわれる。競合するアジェンダが台頭して縄張り争いや社内の摩擦が発生し、共通の目的意識が損なわれる。

 こうしたパターンから、アラインメントの失敗はオペレーション上の失敗ではなく、主にリーダーシップの失敗であることが窺える。アラインメントを継続的に管理すべきものではなく単発の施策と捉えるリーダーは、ほどなくして再びミスアラインメントの状態に陥ってしまう。

 では、成功の確率を高めるために経営幹部はどうすべきか。本調査と筆者が著書で論じているソートリーダーシップの知見、さらに筆者のシニアエグゼクティブ向けコーチング経験(その多くは国際的な慈善団体セーブ・ザ・チルドレンなどの組織に直接的な利益をもたらしてきた)に基づいて、戦略的アラインメントにおいて経営陣が陥りがちな共通の過ちと、それをリーダーシップの最優先課題に引き上げるための確かな手法を紹介しよう。

戦略的アラインメントに関する典型的な過ち

 ミスアラインメントがこれほど頻発する背景には、リーダーシップに共通する3つの失敗がある。

責任者がいない

 全社的な戦略的アラインメントを統括する責任者が存在しないケースが少なくない。調査結果が示すように、経営幹部は戦略的アラインメントの重要性を十分認識しており、多くはミスアラインメントのリスクや、それが持続可能なパフォーマンスに及ぼす脅威も理解している。それにもかかわらず、自社の事業戦略がパーパスと整合しているか、組織のケイパビリティが選択された戦略と整合しているかを確認する責任を誰が負っているのかを明確に把握している人は少ない。

「戦略的アラインメントの確保は誰の責任か」と尋ねると、筆者が関わったグループから――シニアエグゼクティブであれ、現場のスタッフであれ――最も多く聞かれる答えは、「CEO」「取締役会」あるいは「全員」だった。これらの答えはいずれも問題をはらんでいる。

 大規模で複雑な企業で、一個人やごく少数の幹部に頼りきりになると、完全な情報に基づいて事業運営を行うことができなくなり、ミスアラインメントに陥りやすい。加えて、トップダウンの戦略的意思決定は、組織の中間層に降りてくるうちに意図が見失われ、狙い通りに実行されないことが多い。

 同じように、企業の戦略的アラインメントに「全員」が責任を持つという状況も、実際には誰も責任を負わないことになりかねない。戦略的アラインメントは究極のリーダーシップ課題であり、階層にかかわらず、すべてのリーダーにとっての優先事項であるべきだ。

優先事項になっていない

 戦略的アラインメントに関する責任の所在が明確な場合も、それを最優先事項に置き続けるための取り組みが必要で、そうでないとアラインメントが軽視されるリスクが生じる。

 たとえば多くの回答者が、戦略的アラインメントに関するテーマについて議論を行う頻度が、本来必要だと考える頻度よりも少ないと答えている。平均すると、このテーマについて「議論していない」が9%、「年1回議論している」は16%、「年2回」は15%、「四半期ごと」が31%だった。全体として、56%が理想的な頻度を月1回かそれ以上と答えたのに対し、実際にそれを実行している組織は30%に留まった。

 こうしたギャップが生じるのはなぜか。個々のリーダーも、リーダー集団としても、戦略的アラインメントへの配慮を後回しにしてしまう理由として、成果へのプレッシャー、時間不足、目の前のトラブルへの対処を挙げることが多い。いずれも無理からぬ理由ではある。

リーダーが体系的な思考をしていない

 筆者は、ほぼすべての国と業界にまたがる数千人の経営幹部向けに戦略的アラインメントを指導してきた。その際、受講者から「なるほど、言われてみれば当たり前のことだ」といったコメントが寄せられることがある。

 戦略的アラインメントは直観的に魅力的であり、後から振り返れば完全に筋が通っているように思える。しかし、多くの経営幹部は自然とそのような思考様式にたどり着くわけではない。無理のないことではあるが、多くの場合、オペレーション上の論点が優先され、目先の関心事に注意を奪われ、戦術レベルの判断が戦略的思考を曇らせてしまう。

 同様に、自社が戦略的アラインメントをすでに実現していると誤認しているリーダーも多い。筆者が主催してきた多くのワークショップで、リーダーの地位が高くなるほど、部下に比べて、自社の戦略を肯定的に評価する傾向が見られた(部下が正直に答えた場合)。

 意思決定権の中枢に近いほど認識は肯定的になりやすく、組織の中枢から離れた立場にある人ほど、成果を悲観的、あるいは否定的に捉える傾向がある。複雑性の高い組織になるほど高レベルのアラインメントを維持する困難さも高まるが、そうした組織では、この問題はいっそう顕著になる。

戦略的アラインメントをリーダーシップの継続的な取り組みとする

 戦略的アラインメントも体力維持と同じように、いったん失ってから取り戻すよりも、日頃から維持し続けるほうが容易である。したがって、戦略的アラインメントは継続的なリーダーシップの実践として位置づけられるべきだ。そうすることによって、あらゆるレベルのリーダーがどのような問いを立て、どのような対話をし、組織としてどのような戦略的選択を支持するのかに関する枠組みが形づくられる。

 では、企業のパフォーマンスを高めるために、リーダーは戦略的アラインメントをどのように捉えるべきなのだろうか。

アラインメントを戦略的に最も重要な関心事に位置づける

 第1に、アラインメントはすべての高業績企業に不可欠な要素であり、唯一ではないにしても、主要な戦略的関心事の一つであるべきだ。戦略的アラインメントとは、企業がなぜ存在するのかという根本(すなわちパーパス)から、市場戦略(どのように競争するのか)、M&A(企業の合併・買収)、組織設計(どのように組織されているのか)、人事戦略に至るまで、事実上あらゆる戦略的意思決定を支える組織原理であり、リーダーシップの設計図でもある。

 戦略的アラインメントは、自然に生まれるものでも偶然に生じるものでもない。リーダーは、理想的に整合性が取れ、パーパスに最も適合した企業の姿を構想し、長期にわたって可能な限り、それを具現化していく必要がある。

 外部要因や運などの条件が同じだとすれば、アラインメントが確立されている企業ほど高い業績を挙げる可能性が高い。さらに、ミスアラインメントは生産性の低下やイノベーションの欠如、職場環境の分断といった形で表面化するが、どのような形であれ、そうしたリスクは不必要であり、また回避可能でもある。

 自分の組織について考えてみよう。チーム内で戦略的アラインメントについて、どの程度の頻度で議論しているだろうか。戦略的アラインメントがリーダーの役割の重要な要素だと認識されているだろうか。認識されていない場合、それはなぜか。そして、それがパフォーマンスにどのような影響をもたらしているか。戦略的アラインメントを常に意識の中心に置いていないリーダーは、自社の運命をみずから支配する代わりに、運に振り回されるリスクを背負っている。

企業をバリューチェーンとして捉える

 あらゆる企業はバリューチェーンであり、その強さは「鎖」を構成する「輪」の中で最も弱い輪によって決まる。第1の、そして最も根源的な輪は企業のパーパス、つまり、会社の根本的な存在理由である。

 そのうえで、筆者が『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の記事で述べたように、以下の4つの輪が続く。ビジネス戦略(パーパスを実現するために、製品・サービス・市場という形で企業が何に勝とうとしているのか)、組織的ケイパビリティ(外部の市場で勝つために、組織として何に秀でている必要があるのか)、組織アーキテクチャ(人材、テクノロジー、構造、組織文化、プロセスといった要素を、企業が勝てる形に設計すること)、マネジメントシステム(理想的なITマネジメントシステムや人事管理システムなどを通じて、勝つために必要なパフォーマンスを生み出す仕組み)である。

 自分の組織について考えてみよう。ここに挙げた5つの輪は、どの程度、整合性が取れているだろうか。自社のバリューチェーンの中で、弱い輪は存在しないだろうか。それは戦略か、組織的ケイパビリティか、あるいはその両方か。簡単な自己チェックによって、戦略的アラインメントの強さを自己診断し、改善のために優先すべきリーダーシップ課題を明確にできる。

意図的なアラインメントの選択を行う

 企業のバリューチェーンを構成する輪は、いずれも戦略的な選択の産物であり、高度なアラインメントはリーダーがどのような選択を行うかによって左右される。

 組織のリーダーシップは、何千もの潜在的な選択肢の中から、自社のパーパスに最も適合する戦略、組織的ケイパビリティ、構造、組織文化、テクノロジー、人材(ここに挙げたのは一部にすぎない)の理想的な組み合わせを選び取らなければならない。

 そうした戦略的選択には、複雑なトレードオフを乗り越えたり、不完全なことも多い情報に基づいて、状況に応じた賭けに出ることも含まれる。すべての企業に当てはまるような万能のソリューションは存在しない。他社を真似したり、「ベストプラクティス」に盲目的に追随する姿勢は、ミスアラインメントを引き起こしやすい。

 目指すべき成果は、下流での実行の指針となる、個別の条項に応じた一貫性のある戦略原則を生み出すことである。理想的な戦略的アラインメントが達成されている企業では、すべての企業行動が意図的で、体系的で、規律に基づいている。その中には、あえて構造に縛られず、自発的かつ実験的な選択をすることも含まれる。

 自分の組織について考えてみよう。製品のラインアップなどの戦略的な選択を、自社のパーパスに最も合った形でアラインさせるために、どのような選択をしているか。組織設計の選択を左右する要素は何か。たとえば、階層型の組織構造とフラットな構造のどちらを採用すべきか。「状況次第」という答えは、正直ではあるが役に立たない。企業バリューチェーンは、こうした根源的な戦略的選択を整理し、判断するための枠組みとなる。

アラインメントの筋力を鍛える

 企業のアラインメントに沿った最善の戦略的選択を行うために、リーダーには複数のレベルにわたって全社的な思考をする能力が求められる。具体的には、外部に目を向け、外部環境の変化に注意を払うことを意味する。また、そうした変化が、短期・中期・長期的に企業全体やその構成要素(事業部門、国別オペレーション、機能部門など)に与える影響を理解することも必要だ。

 企業の規模が大きくなったり地理的に分散したりするほど複雑性も高まり、時間が経つにつれて、高いレベルのアラインメントを達成・維持するのはより困難になる。

 複雑さはアラインメントを失敗させる元凶となりうるが、その対抗策となるのが成熟したリーダーシップである。これは多くの場合、個人やチーム単位の日々のリーダーシップに焦点を当てる従来型の発想ではなく、システムズ・リーダーシップのケイパビリティ(企業を個人と切り離して捉え、企業全体を、多くの要素が連動し合う複雑適応系と見なす能力。そこでは人間は数ある要素の一つにすぎない)を意味する。

 自分の組織について考えてみよう。戦略的アラインメントを達成・維持するために必要なリーダーシップのコンピテンシーが、自社内に備わっているだろうか。自社のリーダーは、複数のレベル、複数の分野、複数の時間軸にまたがる思考ができているだろうか。

アラインメントを集合的に主導する

 長期にわたって高度な戦略的アラインメントを維持することは、階層の違いを問わず、すべてのリーダーに共有されるべき目標である。企業のリーダーシップは集合体として機能し、それ自体が一つのシステムを形成している。そこにはさまざまな階層や役割のステークホルダーが含まれており、全員が組織全体のアラインメントを実現する責任を担っている。

 この点について考えるうえで有用なのは、企業のリーダーを以下の3つのグループに分けて考えるアプローチである。原則のレベルで活動するリーダー(常にではないが、多くの場合、エグゼクティブ・リーダーシップが当てはまる)、方針のレベルで活動するリーダー(通常は人事やテクノロジーといった機能別のリーダー)、実践のレベルで活動するリーダー(一般に、現場のチームリーダーなどオペレーション上のリーダー)である。

 原則は強固な方針として具体化され、その方針が日々の実践へと反映される。そして、そのすべてを支えるのが、あらゆるレベルで整合性の取れたリーダーシップである。企業のリーダーシップ自体がミスアラインメントに陥っているのであれば、高度にアラインされた企業を率いることを期待するのは難しい。

 自社の組織について考えてみよう。戦略的アラインメントを確保するうえで、自社の戦略原則はどの程度明確になっているだろうか。そして、それはどの程度、方針の決定に反映されているだろうか。原則が目指す方向性は、方針の意図を経て、最終的に実践へと落とし込まれているだろうか。企業として目標を明確に掲げているかもしれないが、それは実際の行動として実現されているだろうか。

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 究極的に言えば、戦略的に整合性の取れた企業とは、効果的なリーダーシップの帰結として生まれるものだ。高い企業パフォーマンスを実現するために、リーダーはまずみずからを振り返り、戦略的アラインメントに対する責任を自覚し、そこに十分な注意を払っているかを振り返るべきだ。そして何より重要なのは、戦略的アラインメントを適切な枠組みで捉えているかを問い直すことである。

 調査結果の分析をサポートし、助言を提供してくれた慶應義塾大学の浅川和宏教授、オックスフォード大学のシェンリンチェン・ワンとサム・リッジウェイに感謝する。


"What Leaders Get Wrong About Strategic Alignment," HBR.org, January 14, 2026.