シニアリーダーの燃え尽きを防ぐために見直すべきこと
Illustration by Iryna Korshak
サマリー:多くのシニアリーダーが、長年目指してきたトップの役割に持続可能性を見出せなくなっている。従来、エグゼクティブのバーンアウト対策としてはレジリエンス強化が重視されてきたが、逆境が常態化する環境ではそれも限界を迎える。いま求められているのは、個人の強みやパーパス、エネルギーに沿って役割を再設計するための新たな指針である。本稿では、そのための具体的なアプローチを提示する。

多くの企業リーダーが離職を検討している

 バイオテクノロジー企業の野心的なCTO(最高技術責任者)であるレスリー*は、興奮に胸を高鳴らせてそのポジションに就いた。コアシステムを現代化して、会社の研究能力を大幅に強化する準備ができていた。ところが、次から次へと火消し対応に追われ、組織が吸収できるスピードを超えて変革を実行するようにというプレッシャーにさらされたため、1年半後、彼女は達成感を感じるどころか、その仕事を諦めて早期に引退することを検討している、とコーチ(本稿執筆者の一人であるアイケンバーグ)に打ち明けた。

 レスリーだけではない。多くのシニアリーダーが、静かに同じ結論に達している。彼らが何十年も目指してきたトップの仕事は、もはや持続可能に感じられないのだ。デロイトによると、最高経営幹部の約7割が、自身のウェルビーイングのために現在のポジションを辞めることを検討している。ガートナーによると、2年以内に辞めることを考えている最高経営幹部は50%以上、半年以内と答えたのは25%以上だった。それが現実になると、会社は組織としての知識や継続性、戦略的アジリティ、そして文化的な安定を失う。人材の維持は人事部門だけの課題ではなく、業績のリスクでもある。

 エグゼクティブの燃え尽き症候群(バーンアウト)に対する、近年のお決まりのアドバイスは、レジリエンス(再起力)を高めることだった。だが、逆境に適応する能力であるレジリエンスは、逆境が常態化すると崩壊する。疲れ果てたエグゼクティブたちが必要としているのは、より強靭な鎧ではなく、別の戦略だ。

 筆者らはエグゼクティブへのコーチングの中で、「辞めるしか選択肢はない」と考えるリーダーたちにも、別の選択肢があることを見出した。それは、日々の行動をリセットすることで、苦しんだり犠牲を払ったりすることなく現職に留まる方法である。そのためには自分の役割を、強みやパーパス、エネルギーに合わせて調整する青写真が必要だ。筆者らはこれを「パーソナル・リテンションプラン」(PRP)と呼ぶ。

パーソナル・リテンションプランが重要である理由

 多くの組織では、シニアレベルの人材維持計画は、CHRO(最高人事責任者)に委ねられてきた。CEOや取締役会がそれをサポートする場合もある。しかし筆者らの経験では、最高経営幹部たちは、配下の主要リーダーたちが、いかに頻繁に辞職を考えているかを必ずしも把握していない。さらに、組織のトップリーダーともなると、その役割を果たす能力がないと思われることへの恐れから、あるいは「そのうち状況が落ち着くだろう」という期待(実際そうなることは滅多にない)から、みずからの懸念をオープンに伝えない。

 だからこそ、早期退社を考えているエグゼクティブには、まず自分のPRPを作成することを筆者らは勧めている。PRPは、燃え尽きることなく現職に留まって成功できるよう、自分の役割や人間関係、期待を見直すためのシンプルな自作の青写真だ。

パーソナル・リテンションプランをつくる方法

 PRPは3つのステップで作成できる。ひとたび完成したら、取締役会や最高経営幹部のメンバーなど主要なステークホルダーと共有してもよい。同僚やチームと話し合う材料にもなるだろう。ただし基本的には、この計画は自分の優先順位をリセットするためのものであり、本当に見る必要があるのは、本人だけだ。