環境特性に応じた戦略が構築できない理由

 石油業界では、企業の戦略立案者にとって想定外の事態が起こることは比較的少ない。もちろん、時には状況が大きく変わることもあるが、それは比較的予想のつく形で起こる。

 たとえば、地政学的な力関係が変化したり、新たな資源が見つかり開発されたりすれば、世界的な供給量が増減することを、戦略立案者は知っている。所得、GDP、天候などで需要が上下することもわかっている。

 このような要因は、自社や競合他社が制御できる範囲を超えており、参入障壁も非常に高いので、実際にはどの企業もゲームを大きく変える状態にはない。企業はかなり安定した世界のなかで、固有の能力(ケイパビリティ)と資源を慎重に活用しながら、競争力のあるポジションを確立し保持する。