ポーター流の戦略分析から
視座を転換させる

 マイケル・ポーターがかの有名な「5つの競争要因」を発表した論文は、次の言葉から始まる。

「戦略担当者の仕事は、突き詰めれば、競争を理解し対処することである。しかし往々にして、狭義に競争を定義してしまいがちだ」[注1]

 本稿を始めるに当たって、これに勝る適切な言葉は想像しがたい。ポーターが30年前に論文で提示したアイデアは現在、事業戦略の実践に関する支配的概念となっているが、競争に関する特定の、それゆえ部分的な解釈の上に成り立っている。その結果、戦略担当者の仕事像も部分であるというのが私の主張である。