従来の戦略立案は
科学的ではなかった

 戦略立案者は、みずからの厳密さを誇りにしている。戦略というものは数字と徹底的な分析に基づき、偏見や裁量、意見などには左右されないはずだといわれる。また、裏付けとなる計算が膨大なほど、戦略立案のプロセスへの自信は深まるものだ。そのうえ、数字や分析というものは、すべてにおいて科学的だという印象を生んでいて、現代社会においては、「科学的である」は「優れている」と同義語だ。

 しかし大・中規模企業で毎年恒例の戦略立案の際に、マネジャーが戦々恐々としているのはいったいどうしてだろうか。あれほど時間がかかる割に、会社の動きに微々たる影響しか及ぼさないのはなぜなのか。

 実際にマネジャーたちと話をしてみると、さらにそのいら立ちが伝わってくる。戦略立案から生まれるのは斬新な戦略などではなく、むしろ既定路線をいつまでも踏襲するだけだ、と彼らは言うだろう。