-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
「戦略的な抵抗」に有用な2つの実践的フレームワーク
企業の世界で「defiance」(抵抗)という言葉を聞くと、「反乱」的な行為が思い浮かぶことだろう。会議の途中で怒って席を立つ場面や内部告発など、騒々しく、感情的で、リスクの高い行為である。
だが、実際のキャリアにおいて最も効果的な「抵抗」は、まったく異なる形で行われることが多い。
筆者の研究では、抵抗を「自身の真の価値観と異なる行動を取るよう圧力がかかっている場面で、自身の真の価値観に従って行動すること」と定義している。単に反抗したいがために指示に従わないのではなく、一貫性に欠ける状況に対して、原則に基づいて対応する行為、つまり、何かが間違っている時に、指示に従うことを静かに拒む姿勢を指す。誤解を招くマーケティング戦略に疑問を呈する、偏った昇進に反対する、一線を越えた取り組みに異議を唱える、といった行為がそれに当たる。
適切な形で行えば、抵抗はシニアエグゼクティブから自分のチームへの信頼、さらには同僚や取締役会への信頼も高められる機会となる。抵抗とは、リーダーが信頼を獲得し、誠実さを保ち、組織が長期的に生き残るために必要な判断を提示するための手段なのである。
もちろん、原理原則に基づく抵抗にはリスクが伴う。だが、沈黙にも同じようにリスクはある。しかも、キャリアの長い時間軸で考えれば、過ちだとわかっていることに同調することの代償のほうが、抵抗するリスクよりはるかに大きい場合が多い。
組織心理学者で元医師である筆者は、人はなぜ、間違っていると感じても沈黙を保ってしまうのか、彼らが声を上げる後押しとなるものは何かについて、数十年にわたって研究してきた。
本稿では、戦略的な抵抗を行う上で有用な2つの実践的フレームワークを紹介する。1つ目は圧力に抗う際に人の内面が経験するプロセスを示した「抵抗の5段階」、2つ目は難しい判断を下す際の指針となる「抵抗コンパス」だ。この2つを組み合わせることで、リーダーは本能的な反応から意図的な行動へと移行するためのロードマップを手に入れられる。さらに、本稿の最後では、抵抗する能力を時間をかけて強化していくための実践的な方法についても紹介する。
抵抗の5段階
抵抗は最初から完全な形で始まるわけではなく、徐々に進行したり、特定の出来事をきっかけに始まったりする。この進行過程を認識しておくことで、リーダーはより明確な判断力に基づき、より後悔の少ない形で、準備し、練習し、対応することができる。
筆者は、原則に基づく抵抗に至る過程で、人々が通常たどる5つの段階を特定した。この5段階はそれぞれ独立しているわけではなく、互いに結びついている。また、5つの段階を直線的に進むとは限らないし、抵抗に至るために、必ずしも5段階すべてを経験する必要があるわけでもない。それでも、このロードマップを把握しておくことで、自分がどの段階にいるのかを認識し、次に進む方向についてより意図的な選択を行うことが可能になる。
1. 不安
最初の兆しは不安感だ。腹の奥や姿勢、睡眠に不安が現れ、何かがおかしいと感じる。倫理的な境界が試されているのだ。リーダーの場合、理屈の上では合理的に思えるが、何かがおかしい方向に進もうとしているという場面で違和感を覚えることが多い。







