AIの投げかける「質問の質」が意思決定に及ぼすリスク
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サマリー:生成AIが単なる回答者から、問いを投げかける「対話型エージェント」へと進化する中、その質問スタイルの偏りが意思決定に及ぼすリスクが浮き彫りとなっている。筆者らの研究により、LLMは人間と異なり、解釈を重視する一方で実行プロセスへの問いが不足する傾向があることがわかった。AIを戦略的パートナーとするには、人間が主導権を握り、その特性を理解して導く必要がある。本稿では、AIとリーダーの質問構成の違いを分析し、盲点を補い意思決定の質を高めるための具体的なアクションを提案する。

生成AIが「質問を投げかける」対話型へ進化している

 大規模言語モデル(LLM)ベースの生成AIツールを提供する企業の間で、熾烈な競争が繰り広げられている。チャットGPT、クロード、ディープシークなどのツールは、ほぼ毎月、新機能をリリースしている。これらのAIシステムは、言語モデルを通じてユーザーと対話形式でやり取りすることができるが、それらの多くが、単なる「回答の提供者」から、より有用な回答を生成するために質問を投げかける「対話型エージェント」へと進化しつつある。

 この現象の一例が、ワッツアップ上で動作する設計のチャットボット、WaLLMだ。WaLLMは単純なクエリに回答するだけではなく、フォローアップの質問、トレンドや最近のクエリのリスト、さらには「本日のトップクエスチョン」まで提供している。もう一つの例は、オープンAIのディープリサーチ機能だ。これは、シンガポールを拠点とする企業が提供するAIエージェント、マナスと同様、ユーザーに質問ができるように設計されている。ユーザーの要求が曖昧な場合は、特定の解釈を前提にして回答するのではなく、要求の意味を明確にするための質問をして、フラストレーションや誤回答を生むリスクを低減している。

 このように、これらのシステムは、まるでコンサルタントや同僚、研究のパートナーのように対話をする。モデルは質問をすることによって、より適切な回答や提案を提供するのに必要な情報を集める。これは、より適切な質問がよりよい意思決定を生むと理解している優れたリーダーのやり方を模したアプローチだといえる。

 だが、LLMの質問の意味構造に関する研究は進んできたものの、LLMが発する質問のタイプについては、ほとんど知られていない。こうした状況はビジネスリーダーにとってリスクになる。意思決定プロセスでどのような質問が行われるかは、収集する情報、ひいては意思決定の結果に影響を及ぼすからだ。そのため、LLMのクエリと経営幹部の質問に違いがあるか、また言語モデルによって違いがあるかどうかを理解することは、極めて重要である。そうでないと、知らずしらずのうちに、LLMに意思決定を直接左右されてしまう。

 さらに、「エージェント型」機能の急速な進化により、質問の重要性はユーザーとモデルのやり取りだけに留まらなくなっている。エージェント型AIは、それ自体が論理的思考をしているかのような、半自律的システムを備えている。そして、あらかじめ定義されたタスクを実行するプランを作成し、タスクの成果を評価し、目標に向けて意思決定を下し、目標を達成するためのアクションを起こすことができる。このシステムは、みずからに質問を投げかけることによって、タスクを遂行する。したがって、モデルの質問スタイルを理解することは、ビジネスリーダーがモデルから提供される提案を解釈し、評価する助けになる。

 本稿では、LLMが人間とは異なるタイプの質問をすること、また筆者らがテストした種々のモデルには一貫したパターンがないことを、証拠を持って示す。筆者らは、マネジャーがとりわけ意思決定の場で、注意深くLLMを適用することを推奨しており、そのための具体的な方法を提案したい。

経営者は意思決定を支援するために、どのようなタイプの質問をするか

 関連する情報を収集し、意思決定の質を高めるためには、適切な質問をすることが不可欠だ。経営幹部がどのタイプの質問をするかによって、意思決定の方向性が決まる。筆者らの研究では、意思決定をサポートする5つのタイプの質問を特定し、それをリーダーズ・クエスチョン・ミックス(LQM:リーダーの質問構成)と名づけた。

・調査のための質問(「何がわかっているか」):根本原因や可能な解決策を明らかにする質問。意思決定者が問題や可能な解決策をよりよく理解する助けになる。たとえば、「この問題の根本原因は何でしょうか」「この選択肢はどの程度、実現可能性がありますか」のように問う。

・推測に基づく質問(「もし~したら」):他の選択肢や創造的なシナリオを探る質問。前提を疑い、他のやり方ができないか、他に検討すべきことがないかを問う。「この問題について、別の見方ができませんか」、「プランBは何ですか」のような質問は、イノベーションを刺激し、思考の幅を広げる。