AIが検索エンジンを凌駕する時代、オンライン上で存在感を高める方法
Kryssia Campos/Getty Images
サマリー:AIが検索の主導権を握り、企業サイトの発見や流入の仕組みが激変している。生成AIによる情報の統合や要約が主流となる中、従来のSEOや広告モデルは威力を失い、消費者がブランドに直接触れる機会が激減している。企業は「アルゴリズム」を最初の顧客と見なし、AIに選ばれるための戦略を再設計しなければならない。本稿では、AI環境下で生じている3つの構造的変化を明らかにし、企業が取るべき具体的な対策を提案する。

オンライン検索の変化は、戦略や組織を根本的に変える

 AIは、異なりながらも重なり合う2つの形でオンライン検索を再構築しつつある。いずれも消費者にとっては負担を減らすものだが、企業にとっては摩擦を増大させるものだ。

 第1に、チャットGPTやマイクロソフトのコパイロットに代表される大規模言語モデル(LLM)が、消費者が答えを求める場所として検索エンジンに取って代わり始めている。人々が検索クエリを入力すると、膨大なテキストを統合した回答が提示される。その際、情報源やブランド名が選択的に引用されることもあれば、まったく引用されないこともある。第2に、グーグルのジェミニを使った「AIによる概要」がウェブサイトへのトラフィックを減少させている。こうした概要は従来の検索結果の上部に表示され、見慣れたリンクのリストよりも先にAIが生成した要約を提示する。

 こうした動向は、企業がいかにして発見され、アクセスされるかというプロセスに重大な変化をもたらしている。ビジネス戦略や組織の運営のあり方に根本的な影響を及ぼすものだ。

 本稿では、これらの変化のうち3つのシフトを明らかにし、企業がこの新たな探索の環境をどのように進むべきかを提案する。

シフト1:AIによる推奨が影響力を増している

 企業はブランド認知度を高めるために、広告に巨額の費用を投じている。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、パンパース、タイド、ジレットといった消費財ブランドの認知向上のため、米国でもトップクラスの年間約90億ドルを費やしている。しかし、数十年にわたる消費者調査が示すのは、人々は広告を許容してはいるものの、信頼しているのはレコメンデーションであるという事実だ。そして今日、その信頼は人間(友人、家族、販売員、インフルエンサー)から、アルゴリズム(主にLLM)へと移りつつある。

 消費者が広告というプッシュ型の影響を受けにくくなり、AIのレコメンデーションというプル型の影響をより強く受けるようになっているということだ。消費者は、大手広告主によるブランド主導のメッセージに頼る代わりに、「最も効果的で安価な紙おむつのブランドはどれか」「レストラン用にはどの洗濯洗剤を推奨するか」といった質問をAIに投げかけ、データに基づいたメッセージを頼りにしているのである。

 こうした消費者行動の変化を受け、多くの企業は広告費の配分方法や配分先を再考し始めている。

 欧州の大手オンライン小売業者、ノードペイ(仮名)の例を見てみよう。同社は、各顧客にパーソナライズされたAI主導の商品リストを提供することで、AIレコメンデーションの流れにみずからを直接介在させている。また、ショッピング体験の向上やマーケティングのパーソナライズのために、AIシステムを用いてコンテンツ、レコメンデーション、対話をリアルタイムで生成している。競合に「後れを取らない」ために広告予算を増やすのではなく、外部エージェンシーへの支出を削り、AIを活用した社内制作へと予算を振り向けているのだ。

 ある広告担当役員は、次のように説明した。「広告支出を11%削減しながら、マーケティングの成果物はむしろ増やしている。生成AIを活用して業務を内製化することで、エージェンシーへの支出を約25%カットした。また、画像制作ワークフローの多くをミッドジャーニー、ダリ、アドビのファイアフライなどのツールに置き換えたことで、約6週間かかっていたサイクルを約1週間に短縮した」

企業がすべきこと

 広告予算が賢明に使われているかを見直す。あらゆるコンテンツで一貫した具体的な言葉を使用し、各種LLMツールが、その具体的なアイデアを自社ブランドと結びつけるようにする。さらによいのは、自社の名前を冠したコンセプト(「アクメ指数」「スミス・メソッド」など)を作成し、AIシステムがアイデアとブランドを関連づけるように促すことだ。そして、広告予算をAIネイティブなレコメンデーションチャネルへと振り分け、生成AIの自社運用能力を構築して、クリエイティブ制作の加速化と低コスト化を図ろう。キャンペーン単位の広告から、継続的で常に実験を繰り返す運用へとシフトする必要がある。

シフト2:SEOとウェブサイト設計の重要性が低下する

 従来の検索は明確なパターンに従っていた。顧客がクエリを入力すると、検索エンジンがランクづけされたウェブサイトのリストを提示し、顧客はいくつかのリンクをクリックして、自分の問いに対する最善の答えを探す。このプロセスにより、コンバージョンに至るまでの重層的な経路が生まれ、企業はウェブサイトのデザイン、有用なページ、顧客の声、事例などを通じて差別化を図る余地があった。

 現在、この構造が崩壊しつつある。顧客が商品やサービスの推奨や、専門的な知見を求めてAIツールに尋ねたり、グーグルの「AIによる概要」をただ見たりする場合、彼らが受け取るのは探索すべきリンクのリストではなく、完成された回答だ。

 最近の調査によると、検索結果にAIによる要約が表示されると、ユーザーがランクづけされたウェブサイトをクリックする割合は、AIがない場合の15%に対し、わずか8%に留まるという。これはクリック数が47%減少することを意味する。一部のパブリッシャーでは、顧客の探索プロセスが失われ、かつて組織が競争優位性を形成していたブランドのタッチポイントがほぼ消失したことで、クリック率が89%も激減するという驚くべき事態に陥っている。

 米国の大手民間健康保険プロバイダー、Hシュア(仮名)の事例を考えてみよう。同社は、消費者がブランドを認知するプロセスがLLMによって省略されていることに気づいた。かつて検索エンジンは、潜在的な顧客をHシュアの教育用ページや保険内容の解説、比較ツールへと誘導し、購入決定に至るまでに複数回サイトを訪問することも珍しくなかった。こうした繰り返される交流が信頼を築き、規制上の微妙なニュアンスを伝え、複雑な領域における信頼できる専門家としての地位を確立させていたのである。

 しかし現在、消費者はチャットGPTなどのLLMに直接質問を投げかけるようになっている。こうしたモデルは、Hシュアの保険内容や給付構造、規制の説明を、競合他社の同様の資料とともに統合し、包括的な回答を生成する。そこにはHシュアのサイトへの直接リンクが含まれないことも多い。

 Hシュアの運営責任者であるジュリアは、こう説明する。「当社の分析によれば、以前は顧客のリサーチ工程で15~20回のサイト訪問を必要としていた情報が、いまではLLMが生成する1回の回答で提供されている。顧客が当社のブランドを意識しなくなり、トラフィックやコンバージョンの機会だけでなく、健康やリスク、財務保護に関する重要な決断を導くという当社の役割までもが失われているのだ」

企業がすべきこと

 コンテンツ計画を、ページの最適化から、AIに情報を引用させるための設計へとシフトさせる。組織独自のデータ、実体験、強力な視点、資格を持つ社内専門家の実名を公表する。LLMは「ある調査によれば(中略)」という表現よりも、「Hシュアのヘルシー・プラス調査によれば(中略)」という表現を好んで参照する。コンテンツには実際の専門家の名前、資格、略歴を付与すべきだ。自社の思考の代名詞となるような独自のコンセプト、ベンチマーク、あるいはブランド名を冠したフレームワークを作成する。AIモデルが容易に再現できるよう、明確で引用しやすい言葉でコンテンツを構成しなければならない。成功の尺度はトラフィックだけでなく、自社のブランドや専門家がAIの回答内で言及され、言い換えられ、主要なアイデアと関連づけられているかどうかで測るべきだ。

シフト3:マーケティングに新たなオーディエンスが登場した

 顧客が「自分の小規模ビジネスに最適な会計ソリューションは何か」と尋ねると、クロードは対話形式で生成されたレコメンデーションを提示し、多くの場合、リンクやブランドページをクリックする必要はなくなる。その結果、顧客ではなくAIが第一印象をコントロールするようになり、従来のマーケティングは威力を失う。

 商品レビューとアフィリエイトの大手サイトのプロダクト・インサイト(仮名)は、この事態を目の当たりにしている。同社のマーケティング部門は、収益を上げるために、ノートパソコンから調理家電に至るまで、包括的な商品比較や専門家によるレビューに多額の投資を行ってきた。

 しかし、消費者がジェミニに「ペットの毛に最適な掃除機はどれか」と質問できるようになったため、これまでは最も価値の高かったページのトラフィックが67%減少したことが同社のデータで明らかになった。現在、同社が扱う主要な商品クエリの78%において、ジェミニによる概要が表示されている。

 これは、グーグルがAIによる概要を導入したことで、単に検索結果を変えただけでなく、マーケティングの役割そのものを変えたことを示している。ブランドはますます顧客だけでなく、そのやり取りを仲介するアルゴリズムをも説得しなければならなくなっているのだ。

 装飾、園芸、DIY、掃除、娯楽に関する実践的なガイダンスを提供するプラットフォームを運営する米国の出版社、ヘンリー・スミス(仮名)について考えてみよう。同社のマーケティングは、読者の生活空間づくりを助ける日常的なアドバイスを重視し、専門家によるガイドとトレンドの知見、厳選した商品の提案を組み合わせていた。そのビジネスモデルは、「200ドル以下の最高のノイズキャンセリングヘッドホンは何か」といったクエリで上位にランクインし、購買意欲をアフィリエイト収益に転換することに依存していた。

 現在、AIシステムはそれらのランキングを検索結果の中で直接生成し、クリックもリンクもブランドメッセージも介さないことが多い。レコメンデーションの枠組みをつくるのは、パブリッシャーではなくアルゴリズムなのだ。

 これを受けて、ヘンリー・スミスはマーケティングそのものを再設計した。チーフ・グロース・オフィサーのマイケルは次のように説明する。「AIが権威と専門性を解析できるようにコンテンツを構成している。スキーマ(コンテンツの内容を機械が理解できる形で定義する、標準的な記述ルール)に投資し、オーサーシップシグナル(誰がコンテンツを作成し、なぜその人物に資格があるのかを示す指標)を強化し、クリーンなデータアーキテクチャー(アルゴリズムが容易に解釈できるようコンテンツを構造化、整理、コード化する方法)を整えた。さらに、ニュースレターや指名検索を通じて、オーディエンスとの直接的な関係を構築する取り組みを加速させている」

 マイケルにとって、この戦略的な教訓は明白だ。「マーケティングはもはや、人間の認識に影響を与えることだけが目的ではない。AIが介在する市場において、最初の顧客はアルゴリズムなのだ」

企業がすべきこと

 概念を明確に定義し、手順や定義といった構造化された説明を用いたコンテンツを執筆する。結論は簡潔に述べる(LLMは明快さを好む)。そして、明確なブランド名、明確なポジショニング(「XはZを行うYである」)、あらゆる場所(自社サイト、リンクトイン、メディア、ウィキペディアのスタイルのプロフィール)における一貫した説明により、自社ブランドが引用されやすいようにする。業界誌、専門家へのインタビュー、カンファレンスの議題、著者の署名欄などに、自社ブランドが継続的に登場するようにすべきだ。自社ブランドに関する第三者の議論(レビュー、比較、ケーススタディ)を促すことも重要だ。LLMは、情報の頻度と複数のソース間での一貫性から、その重要性を推論するのだ。

* * *

 企業は20年以上にわたり、検索エンジンを競争優位性の源泉としてきた。SEO計画を磨き、広大なコンテンツライブラリを構築し、クリックを獲得してトラフィックを呼び込み、関心を収益に変えるために多大な投資を行ってきた。

 その時代は、AIの出現とともに終わりを迎えようとしている。消費者はもはやウェブサイトを訪れる必要がなくなり、ブランドは消費者にとって見えない存在になりつつある。回答がリンクに取って代わり、情報の統合が探索に取って代わる中で、認知度はもはやクリックではなく、AIシステム内部におけるブランドの存在感によって獲得されるものとなる。

 AIが支配する新たな環境において勝者となるのは、AIを「最適化すべきチャネル」としてではなく、「影響を与えるべきオーディエンス」として扱う者だろう。そのためには、専門性の明快さ、シグナルの一貫性、そして検索の枠を超えた持続的なブランド構築が必要だ。


"LLMs Are Overtaking Search. Here's How to Adjust Your Online Presence.," HBR.org, March 06, 2026.