実務の現場に対する取締役会の「過剰介入」をどう防ぐか
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サマリー:経済の不安定化やAIをめぐる期待の高まりを背景に、取締役会が実務レベルにまで踏み込むケースが増えている。その結果、リーダーシップチームの混乱や意思決定の停滞を招くことも少なくない。本稿では、取締役会との適切な距離感を取り戻し、組織の実行力を高めるための方法を解説する。

なぜ取締役会は事業に口出しするのか

 取締役会は、かつてないほどオペレーター(実務執行者)のような役割を果たすようになっている。経済の不確実性、破壊的な競争、AIへの期待の高まりが重なる不安定な環境で、多くの取締役が自社を正しい軌道で走らせ続けるという責任の重さを感じている。このプレッシャーが、取締役会の関与のあり方を変えつつある。CEOや事業運営の経験を持つ取締役の割合は増えており、プライベートエクイティ流の監視や介入が広く採用されるにつれて、ガバナンスと経営の境界はますます曖昧になっている。

 同時に、厳しい監視にさらされるCEOは、重大な意思決定の負担を一人で背負うのではなく、取締役会に深く関与してもらい、責任を共有しようとする場合もある。経営陣の意思決定に伴うスピード、精査の度合い、そして結果の重みは、ここ数年で変わっている。こうした状況では、たとえコストがかかっても、共同責任のほうが安全に感じられる。

 急成長中のフィンテック企業でCEOを務めるエリーは、このプレッシャーを痛感していた。業務に関する終わりのない問い合わせを減らし、重要な意思決定のリスクを分散させるために、彼女は複数の取締役を、経営幹部チーム(ELT)の会議や、Cレベル幹部が各チームと行う会議に招いた。

 エリーが後に語っているように、彼女は取締役に難しい意思決定を遠く離れたところから検討するのではなく、思わぬ方向に進んだ場合に備えて自分と同じ立場で支えてほしかったのだ。

 ところが、取締役たちはすぐに、顧客対応、人材採用、製品の優先順位といった領域に口を出し始めた。やがて、以前は迅速に進んでいた意思決定が停滞するようになり、監督と実行の境界が崩れていった。組織全体からは、会社を動かしているのはELTではなく取締役会であるかのように映り始めた。エリーが当初、コミュニケーションを簡素化する手段だと考えていたことを、彼女のチームは信頼と権限の喪失と受け止めたのだ。

 筆者たちは(キャスリンは経営幹部およびチームコーチとして、ジュリーはエグゼクティブコーチおよび教授として)シニアリーダーと関わる中で、業界や企業の所有形態を問わず、このパターンを繰り返し目にしてきた。

 取締役会が経営チームのように振る舞っている時、あなたは二重の課題に直面している。すなわち、ELTとの信頼関係を回復しつつ、取締役会との連携のあり方を再調整しなければならないのだ。そこで、緊張を高めたり、実行をさらに遅らせたりすることなく、両方を実現する3つのアプローチを見ていこう。

取締役会が「何をしているか」だけでなく、「何を解決しようとしているのか」を見極める

 取締役会が事業運営のあり方に自信を持てなくなると、業務により深く関与することでそれを補おうとする。PwCの「取締役会の有効性調査2025年」によれば、取締役会が実務レベルの事項に関与していると報告した経営幹部の割合は、数年前と比べてほぼ倍増している。