業務改善を推進する4つの能力
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サマリー:同じ業務改善手法を導入しても、飛躍的な成果を挙げる企業と伸び悩む企業があるのはなぜか。長年定着してきた「オペレーショナル・エクセレンス」だが、激動の現代では単独の改善手法に注力するだけではもはや不十分だ。本稿では、トップ企業と業績不振企業を対象とした調査をもとに、持続的な競争優位性を生み出す「累積能力」の秘密を解き明かす。

持続的に進化させるには

 同じ業務改善手法を採用しているにもかかわらず、企業によって成果に差が生じるのはなぜだろうか。たとえば銀行業界を見渡すと、HSBCバンク・オブ・アメリカアメリカン・エキスプレスシティナットウェストウェストパックは、いずれもリーン、シックス・シグマ、および同様のオペレーショナル・エクセレンスを導入しているものの、成果に大きなばらつきがある。バンク・オブ・アメリカやHSBCのように市場シェアを拡大し、顧客満足度を向上させた銀行がある一方で、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドウェストパックのように、伸び悩んだり競争力が低下したりした銀行もある。

 オペレーショナル・エクセレンスは、長らく経営手法の定番であった。しかし、今日の極めて変化の激しいデジタル化された経済において、従来のような単独の改善手法に注力するだけではもはや不十分だ。筆者らの調査によれば、その違いは業務改善手法そのものにあるのではなく、筆者らが「累積的能力」と呼ぶものを組織がいかに構築するかにある。累積的能力とは、相互に関連した能力の連鎖であり、意図を持って積み重ねていくことで、組織が継続的かつ戦略的に将来を見通し、適応し、進化することを可能にするものである。

 持続的なオペレーショナル・エクセレンスを支える能力を解明するため、筆者らは、規模やサービス、オペレーショナル・エクセレンスへの投資額は類似しているものの、競争上の成果が著しく異なる大手銀行4行とヘルスケア企業3社を対象に、複数年にわたる実地調査を実施した。銀行は大規模(総資産100億ドル以上)で、グローバルに事業を展開し、580万人から2200万人の顧客基盤を持つ多角的な金融機関である。一方、ヘルスケア企業は、『ニューズウィーク』誌の「2023年世界の病院ランキング」に選ばれた病院を基盤とする大手サービス企業である。

 これにより、規模やオペレーショナル・エクセレンスへの投資額は類似しているものの、オペレーショナル・エクセレンスを競争優位性へと転換する能力において著しい差が見られる組織を比較することが可能となった。顧客満足度および財務実績指標(J.D. パワーの評価、総資産利益率、効率性を判断する比率など)を用い、業界の業績不振組からリーダー企業までを幅広く選定した。

 調査は、経営幹部108人へのインタビュー、現地観察、およびプロセスマップや標準業務手順書、業務ダッシュボードやKPI(重要業績評価指標)レポート、監査記録、顧客フィードバックレポート、品質プロジェクト文書、過去の業績指標などの内部文書のレビューに基づくデータをもとに、2つのフェーズで展開された。

 フェーズ1では、オペレーショナル・エクセレンスをどのように追求しているかに関連する49指標を特定した。例としては、定期的な内部プロセスレビュー、監査とリスク管理、プロセスレベルの業績指標のモニタリング、顧客からの苦情や満足度フィードバックの収集、競合他社や技術トレンドの分析などが挙げられる。親和図法と体系的な比較を通じて、これらを7つのテーマに分類し、最終的に「発見能力」(Discover)、「改善能力」(Improve)、「整合能力」(Align)、「変革能力」(Transform)という4つの中核能力に集約した。

 フェーズ2では、各社がこれらの能力をどの程度発揮しているかを評価し、そのパターンを競争上のパフォーマンスと比較した。すると、あることが明らかになった。つまり、4つの能力「すべて」を「順番通りに」体得した企業が、共通して他社を上回る成果を挙げていたのである。これらの能力が何を意味し、この順序がどのように長期的な競争優位性の源泉となりうるのか見ていこう。

1. 発見能力:他社が見逃しているものに気づく

 発見能力とは、組織が内部の業務や外部環境のシグナルを体系的に感知し、分析し、解釈する能力である。これにより、企業は非効率、盲点、そして新たなトレンドを早期に特定し、パフォーマンスギャップが生じるのを未然に防ぐことができる。

 筆者らが調査した高業績銀行の一つでは、マネジャーは問題を発見する方法として内部のダッシュボードだけに依存していなかった。同行では、内部プロセスの監視と外部のセンシングを組み合わせ、取引のたびに顧客のフィードバックを積極的に追跡していた。顧客から低い評価(10点満点中5点未満)を受けた場合、支店長は実際の問題が解決した後であっても、みずから顧客に電話をかけ、何がよくなかったのかを理解しようとした。これにより、銀行はサービスにおける隠れた欠陥を早期に特定し、競合他社が反応する前に新たな顧客の期待を察知することができた。また同行は、新興技術や市場動向を追跡する専任の市場調査チームを維持し、業務上の優先順位を内部の欠陥に加え、広く銀行業界の環境変化によって決定していた。

 アマゾン・ドットコムは(本調査の対象外)、この能力を体現している。同社は顧客のフィードバックや閲覧行動を継続的にモニターし、課題を早期に特定している。たとえば、特定の都市での配送遅延が原因で、プライムの常連客が商品をカートに追加した後、購入せずに離脱したこと(いわゆるカゴ落ち)に気づくと、その地域に当日配送拠点を試験導入した。この対策により顧客満足度が向上し、リピート購入の顕著な増加につながった。

発見の実践的な手順

 自社で発見能力を優先事項にするには、まず中核業務内の摩擦点や非効率を特定する。顧客対応の現場では、カスタマージャーニー・マッピングサービス・ブループリントといったツール、および現場スタッフからのフィードバックを奨励することで、隠れた課題領域を明らかにできる。社内やB2Bの文脈では、システム・ログデータを分析して実際の業務フローを可視化するプロセス・マイニングなどのツールに加え、監査証跡のレビュー、サービスレベル遵守状況のチェック、顧客や社内システムと密接に関わる従業員からの直接的なフィードバックなどを活用する。こうした内部の知見と、競合他社の動向、顧客の期待の変化、規制の変更、新興技術といった外部シグナルの積極的な収集を組み合わせる。現場チームや中間管理職が単にこれらのシグナルを収集するだけでなく、迅速に行動に移せるよう体制を整える。そうすることで、企業目標との整合性を保ちつつ、早期の知見を、先を見越した対応へと転換できる。目標は、全体像を見失うことなく、迅速かつ現場主導の意思決定を可能にすることである。

2. 改善能力:修正から学習ループへのシフト

 改善能力とは、発見された知見に基づき、持続的なプロセス改善を通じて対策を取る、企業の体系的な能力を指す。これには、反復的実験、従業員主導の問題解決、そして組織的な学習のための仕組みが求められる。

 筆者らが調査したトップクラスのある銀行では、改善をその場しのぎの対応で終わらせていなかった。同行では、専任チームが従業員に業務改善のツールや手法を指導し、プロジェクトリーダーをコーチングし、各チームが規律ある方法で改善プロジェクトを推進できるよう支援していた。例年、バックオフィス部門だけで約52件の体系的な改善プロジェクトが実行され、プロジェクト報告書や知見は共有ナレッジデータベースに保存されるため、他のチームは成功事例を活用し、同じ過ちを繰り返さずに済んでいた。