自分と異なる視野と視点をもつ人々との深く継続的な対話。それによる自分に固有のセンスの発見と錬成の場。こうしたICSの意図をご理解いただければ、われわれがすべて英語で講義をするインターナショナル・スクールを選択した理由も自明だと思います。単純に語学力やコミュニケーション・スキルを身に着けるということが目的ではありません。

 グローバルな経営センスを磨くための場をつくるためには、教室や学生のコミュニティそのものがグローバルでなければ話にならないからなのです。いろいろな国からきた、バックグラウンドや経験や視点や思考様式が異なる人々と日常的にしつこく対話する場に放り込まれれば、いやでも自分の視点の限界が浮き彫りになりますし、グローバルなビジネスへの構えが生まれます。

センスの習得に教科書はない

 これまでこの連載でも繰り返し強調してきたように、スキルと違って、センスを直接に「育てる」ことはできません。一人ひとりが経営センスある人材に「育つ」しかないのです。

 センスの習得には教科書はありません。グローバルな経営センスを磨くための王道は、実際にグローバルな文脈で経営をしてみて、実体験を重ねていくしかありません。日本企業のグローバル化のためには、企業がそうした機会を意図的に用意し、早いうちから見込みのある社員に機会を提供する必要があります。

 そうした直接体験と比べれば、ICSのMBAプログラムは「疑似経験」に過ぎないかもしれません。しかし、かなり濃い疑似体験を集中して獲得できる「グローバルな経営センスの道場」とでもいうべき内容になっていると自負しています。

 少し前に東京大学の秋入学への移行が話題になりましたが、ICSは12年前から秋入学(9月始まり)を実施しています。関心のある方はホームページをのぞいてみてください(http://www.ics.hit-u.ac.jp/)。定期的にオープンキャンパスを実施していますし、それとは別に、企業からのMBA派遣に関しては、日本企業の人事部の方々向けのオープンキャンパスも開催しています。グローバルな経営人材を目指す人が、一人でも多くICS道場の門を叩いてくれることを期待しています。

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