グローバルな文脈で他者と相対化することによって、ビジネスに対する自分自身の視点なり構えが初めて明確に意識されます。さらには、さまざまな自分と異なるものの見方にさらされることによって、それまでの自分を乗り越える理解が切り拓かれます。「センスを磨く」というのはそういうことです。
僕の講義を例にとりましたが、Corporate FinanceやAccounting、Marketingといった、一見してスキル色の強い科目についても、ICSの学生はスキルを学ぶ背後で、それこそ朝から晩までひっきりなしに議論や対話を続けているわけです。それは相当にハードな日々ではありますが、仕事を離れて一定期間集中しないとできない経験です。
「心が見える」関係で
対話や議論をする意味
ICSがフルタイムのMBAにこだわる理由はそこにあります。夜間のプログラムは仕事と両立できるため効率的なのですが、スキルの向こうにあるセンスを磨くためには、徹底的にフェイス・トゥー・フェイスで時間と空間を共有することが欠かせないとわれわれは考えています。
ICSが相対的に小規模なのにも理由があります。クラスでケースを使ったディスカッションをするにしても、規模が相対的に小さければ、クラスの一人ひとりが何を根拠にどう思うのかという視点の可視性が高まります。対話を通じて自分のセンスに気づき、センスを磨くためにはお互いに「顔が見える場」が必要なのです。
小規模であることの利点は他にもあります。一つはクラスのメンバーが継続的に固定されるということです。ICSでは全員が同じ教室で講義を受け、継続的に討議を重ねます。メンバーが固定されているので、議論のときにお互いの「顔」が見えるだけでなく、それぞれの学生がどういうバックグラウンドでどういう考え方をもっているのか、深いレベルで理解できます。「顔が見える」だけでなく「心が見える」関係で対話や議論ができるのです。
小規模ゆえのもう一つの利点は、クラスに一つのチームとしての雰囲気なりカルチャーを醸成しやすいということです。それぞれの講義科目でのケース・ディスカッションやグループ・プロジェクトだけでなく、ICSではEntrepreneurial ManagementやStrategy Simulation、Field Studyといったプロジェクト・ベースの実習科目もいろいろと用意されています。深い対話を経験するためにこうした「実習」があるわけですが、このような学生の自主的なプロジェクト活動は「チーム・カルチャー」がなければうまくいきません。