経営戦略にAIを用いることの危険性を理解しているか
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サマリー:取締役会などにおいて経営幹部がAIを活用する動きが広がる中、大規模言語モデル(LLM)が特定の経営トレンドを盲信的に推奨する「トレンドスロップ」という深刻なバイアスがあることが判明した。最新の研究によれば、LLMは個別の状況を無視し、現代のバズワードや心地よい抽象論に偏った助言を行う傾向があるという。本稿では、AIに内在する戦略的選好の実態を検証し、リーダーがその罠を回避して真の競争優位を築くための具体的な活用法を提示する。

AIの示す見解は、トレンドに影響されている

 経営幹部やコンサルタントの間で、チャットGPTのような大規模言語モデル(LLM)を取締役会の「影のパートナー」として活用する動きが広がっている。こうしたツールは複雑な情報を要約し、明確な論点を提示し、洗練された戦略的提言を瞬時に提供することを約束する。しかし、LLMが経営のプロセスに組み込まれるにつれて、重大な疑問が浮かび上がっている。その助言はどれほど優れているのか。そして、信頼に足るものなのだろうか。

 リーダーは、LLMがバイアスのない外部の視点を提供できると考えているだろう。膨大なコーパスで訓練されているのだから、新鮮な視点をもたらすと期待するのは自然なことだ。

 しかし残念ながら、それは誤りかもしれない。LLMは、現在のアイデアを批判的に検証し、コンテキスト(文脈)を詳細に掘り下げ、前提を徹底的に検証し、誰もが納得し始めた頃に異議を唱える同僚ではない。戦略に関しては、LLMはむしろ、新卒のMBA取得者や若手コンサルタントに近い。目の前の状況にふさわしいことより、世間で流行していることを口真似したがる。

 筆者らの最近の研究から、広く使われているLLMに、戦略に関して明確なバイアスが存在することが明らかになった。これらのモデルはコンテキストに即した戦略的な論理ではなく、現代的な経営の流行語やトレンドに乗った戦略を一貫して推奨するのだ。数千回のシミュレーションを通じて、LLMがコンテキストにかかわらず、ほぼ同じような流行の戦略を選択する傾向が確認された。

 AIが筋道立った解決策より流行のアイデアを選びがちな傾向を、筆者らは「トレンドスロップ」と呼ぶ。なかでも戦略分析の場面で現れるのが「戦略トレンドスロップ」である。

 これはリーダーにとって危険な傾向だ。戦略とは、最もホットで人気のあるアイデアを選ぶことではない。厳しいトレードオフと向き合うことなのだ。低コスト戦略を取るのか、差別化を図るのか。両方を同時に実現することはできない。LLMに内在するバイアスを理解しないまま戦略立案をLLMに依存すれば、真の競争優位性を築くどころか、ブームや流行を追いかけることになりかねない。

LLMに潜むバイアス

 LLMは戦略にどのようにアプローチするのだろうか。それを理解するために、筆者らは主なモデル(GPT-5、クロード、ジェミニ、グロックなど)を対象に、経営者が二者択一の意思決定を迫られる7つの基本的なトレードオフについて検証した。

・探索か活用か:新興市場の開拓やブレークスルーとなるイノベーションに資本を投じるか、それとも確立されている中核のビジネスモデルの効率と収益を最大化するか。

・集中か分散か:全社的な一貫性と規模のメリットを確保するために権限を企業の中枢に集約するか、それとも自律性を分散させて現場の裁量を優先させるか。

・短期のパフォーマンスか長期のパフォーマンスか:株式市場を満足させるために当期の四半期ベースで利益を確保するか、それとも持続的な競争優位性に必要となる複数年の戦略的イニシアティブに投資するか。

・競争か協働か:既存の市場シェアを奪い合うゼロサムの戦略を追求するか、それとも協調と競争を組み合わせた「コーピティション」モデルを採用し、業界内のパートナーシップを通じて価値総量の拡大を目指すか。