――11月に発表した富士フイルムとのバイオシミラー(バイオ医薬の後発品)分野での提携はグローバル展開のなかでどのように位置付けられているのでしょうか。

 バイオ医薬の難しいところは、つくる技術に非常に高度なものが要求されるところ。設備投資が初期に非常にかさむ、技術も難しいということは、すなわち薬価にはね返ります。できたものは非常に高額な薬価がついて、それが医療費の高騰を招くというのが一つの課題です。

 当社は、もちろん新薬メーカーとしてバイオ医薬に携わっていきますが、グローバルに考えたときに、品質を高く保ちながら、コストを下げていくことは、先発薬の特許切れで参入するバイオシミラーにも当然言えることで、バイオシミラーでそうした技術が完成されれば、新薬のほうにも応用できる。

 富士フイルムさんはイギリスとアメリカに製造能力を持っている。その富士フイルムさんの製造能力と、我々の持っている新薬路線、両社の提携によって、どちらにとっても、品質とコストの面でメリットがある。グローバル展開ということでは非常にぴったりな組み合わせです。

異種の技術の組み合わせで
バイオ医薬にブレークスルーを起こす

 また、本当に低コストで高品質のバイオ医薬を作るということになると、従来の技術の枠を超えた革新的な技術がどうしても必要です。イノベーションを起こさないといけない。富士フイルムさんの一番の強みはプロセス制御です。薄いフィルム一枚の中に何層にもわたって化学物質をレイヤーで重ね、しかも成分を均一に作る。精密なプロセス制御の技術と、我々の持っているソフトの部分というんですかね、非常に高効率な細胞培養技術・タンパク精製技術を組み合わせて、バイオ医薬に新しいエンジニアリングを持ち込めばブレークスルーがあるのではないかということなんです。

――2012年春までに合弁事業を立ち上げ、13年に臨床試験入りと発表されていますが、その後の、どこに製造拠点を持つとか、販売はどちらが受け持つといったことはいかがでしょうか。

 まだですね。我々だって製造設備持っていますから、当社が作ったほうがいいのか、あるいは富士フイルムさんの工場に委託して作ったほうがいいのか。あるいは、新たな工場をつくったほうがいいのかはわかりません。販売もそう。まったく第三者の製薬メーカーに委託して全世界に売らせることもできます。まだ決定はしていません。まさにグローバルに考えた時に、どういうビジネスモデルが一番いいかということは、これからベストな選択をしたいです。

――従来よりアライアンス戦略を有効に使われてきたということですが、たとえば、ここ数年の動きで見ると、アムジェンに対するポテリジェント技術導出契約の買い戻し、あるいは、プロストラカンの買収による欧米の販売網の獲得など、ちょっとフェーズが変わってきたという気がします。

 それはもう、グローバル化に向けて着実に前進しているということの表れです。アムジェンから契約を買い戻したのも、ポテリジェント技術を活用した第1号の新薬が成人T細胞白血病リンパ腫という希少疾患に対するものなので、グローバルに販売するうえでも、十分我々でできる。むしろこの製品にこだわって全世界展開するのがいいのではないかと判断しました。