「総合製薬企業から
ネットワーク型製薬企業への転換」
――有望な新薬をグローバル製品に育てていくために戦略転換があったわけですが、背景をもう少し詳しくおうかがいできますか。
どの時点で積極的なアライアンスを組んでやるのか、あるいは、どの時点では自社でやるのがいいのかという判断の見極めは非常に難しいことです。先ほどのKW-0761という成人T細胞白血病リンパ腫向け新薬のケースでは、最初は、ともかくこの新技術はかなり画期的だということで、応用範囲を広げることを目指しました。まだ、人体での有効性もわからない段階でしたが、アムジェンから高い評価をいただいて、一緒にやらせてくれということで、その時点では導出しました。
ところが、臨床試験も進んでくると、実際に成人T細胞白血病リンパ腫という、日本で年間1000人ぐらいの方がお亡くなりになる難病に対するデータが揃ってきた。これまでは有効な治療法がまったくない病気です。そういう特殊ながんであれば、サイズ的にも、会社に特徴を持たせる意味においても、自社でグローバル展開するに非常にいいだろうということで、その時点でアムジェンと交渉して権利を買い戻したんです。
基本的には、研究開発、生産、販売について自社でやれる範囲と、外の力を利用する範囲を段階ごとに見極め、どういう選択肢を取るかフレキシブルに、あらゆる選択肢のなかから選んでやっていく。外の力を巻き込んで、最速のスピードで、最大の価値を生むことが、我々の戦略です。イーライリリー・アンド・カンパニーのCEOだったシドニー・トーレル氏が「総合製薬企業からネットワーク型製薬企業への転換」ということを言っていますが、我々はまさにそれです。
ただし、どういう比率でやるか、自前の比率をどのぐらいにするべきか。今のような比率のまま、サイズを拡大したほうがいいのか。サイズはそのままにしてもっとモノを活発にして展開したほうがいいのか、ということは実はまだわかりません。
その答えが出てくるのは2015年以降だと思います。その理由は、今我々の開発ステージにある新薬候補はかなりある。それらがグローバルに展開し確実に収益に貢献をしてくるのが2015年以降だからです。その時点で、では20年、25年以降どういう形態を取ればいいかということが、ある程度見えてくる。
薬は一発当たると風景が変わってしまいます。二発、三発当たればいいとは思いますが、その当たる度合い、何が当たるかによっても風景が変わる。絶対に変わらないのは、すべてが自前主義になるということ、これは絶対ないと思います。