サイエンスに国境はない
人材は現場でこそ育つ

――グローバル人材の育成について、御社においてはどういった取り組みをされていますか。

 まずは、どこでもやっていると思いますが、グローバル人材を育てる――語学教育も含めて――教育研修プログラムがあります。エグゼクティブ向けプログラムは2011年に15名が受けています。すべて英語で、海外法人の幹部候補社員と日本の経営職社員がともに学びます。しかし、いつも言っていますが、それでグローバル人材が毎年どんどん育ってくるとはとても思えない。あくまで、個人が自分の能力を磨かなきゃいけないということを気付かせるきっかけです。 

 グローバル人材が最も育つ場は現場です。かつて海外駐在員というと、アメリカに行ったら、次ロンドンに赴任したり、パリに赴任したりして、海外駐在員要員として本社と現地を取りもつリエゾン活動が中心のように思われていた時代がありました。

 今、プロストラカンでもそうですが、専門性を持った現場の人がいきなり現地に溶けこんで実務をこなしながら仕事をする。それがグローバル化です。グローバル人材というのは、その仕事を通じて育つものだと思います。

 さらに、研究開発型企業である当社に特徴的な取り組みだと思いますが、今年の夏に、節電にかこつけて、研究員19人ほど、インド、アメリカ、中国に数ヵ月間派遣しました。普通、留学というと指導教授の研究テーマにかかわるものですけど、今回はそうではない。こちらで今やっている日常のテーマをそのまま持ってインドの会社に行って研究してこいと、そういうことをやらせました。

――なかなかユニークですね。

 ええ。町田の研究所のワンフロアの電気を止めるために、人員を集約して、一部の人を海外へ。こういうのは珍しいと思います。

――もともと研究者というのはグローバルな存在というか、グローバルを相手にしてなければ意味ない仕事ですからね。

 サイエンスですから、日本でだけ通用するサイエンスなどあるわけがない。サイエンスに国境も何もありません。

――研究者のグローバル化というのはやりやすい部分もあると思いますが、マネジメントのグローバル化というのは、御社の中ではどの程度進んでらっしゃいますか。

 プロストラカンの経営が我々にとって一番の試金石だと思います。スケールの面においても、一つの会社としてすでに体をなしていますから、これをどうマネージするか、今までの海外拠点のマネジメントと次元の違うことが求められている。そういう意味で、ガバナンスの構築に今真剣に対応しています。