当社から3人が常駐していますが、報告体制、経営のフォローアップなど、毎月、毎月、細かくレビューをやり、目標を設定して、それに対する評価を非常に細かくチェックしています。現地任せにならないように、一緒になって、かと言って、プロストラカンの長年培ってきたやり方とか文化とかいうものは尊重しつつ、我々の要求をきちんとそれとすり合わせてやっていく。今のところはかなりうまく行っています。
日本伝来の発酵技術の蓄積が
バイオ医薬に活きる
――日本発のグローバル・スペシャリティファーマという表現をされていますが、グローバル化に当たって、日本ということについてのこだわり、思いというのはいかがでしょうか。
世界で新薬を出せる国は七ヵ国とか、九ヵ国とかよく言われますが、実際には六ヵ国ぐらいしかない。本当に新薬を出せる力のある国は、アメリカ、イギリス、ドイツ、スイス、日本、フランスぐらい。まだあと一つ、二つありますが、大体六、七ヵ国。ですから、私は日本の成長産業として、製薬なり、ライフサイエンスは、確実に重要な地位を占めるべきだと思っています。わけても日本が意識すべきがバイオ医薬です。
日本は長い歴史の中で発酵技術という、世界に誇るバイオテクノロジーを蓄積してきました。発酵技術があったがゆえに抗生物質で、日本は世界でも非常に優位な地位を占めました。抗生物質は微生物がつくる医薬品です。そして、微生物を使ったアミノ酸発酵とか、あるいはキリンファーマというのはビールの醸造技術を生かしてバイオ医薬品を作り、それが元でアムジェンは大きな成長を遂げました。
日本は発酵技術の基盤がしっかりあったので、遺伝子組換えや抗体医薬といった分野でも、日本独特の技術が育ってきた。今日の協和発酵キリンはそういう歴史を引き継いでいると思います。そういうことから言うと、世界の中でも新薬を出せる国は限られていて、なおかつ特徴的なバイオ医薬品で、必ず日本はいいポジショニングできると思っています。
それから、もう一つ、もっと客観的な見方をすると、バイオ医薬品は、コスト構造に占める固定費の比率が低く、変動費の比率が高い。つまり、バイオ医薬品を製造していく時にかかるいろんな消耗品、カラムとか、フィルターとか、いろんな部品のコストがものすごく高い。ですから、他の国々で使ってもどうせ同じコストがかかるわけですから、ある意味では、手先器用で品質にうるさい日本人は、バイオ医薬をつくっていくものづくりにおいて、強みが絶対にある。
――人件費の高さがコスト構造にあまり影響しないということですね。
ええ。組立産業に比べると対極にあります。日本の輸出品目として外貨を稼ぐということから言えば、私はコスト競争力という点において優位性のある事業じゃないかと思っています。