リーダーは従業員の「喜び」が持つ価値を過小評価している
Illustration by Miguel Porlan
サマリー:多くの企業は従業員理解を直感や表面的な調査に頼っている。北米小売企業の最新研究は、従業員の喜びや動機をデータで可視化し、それが売上高や顧客満足度の向上につながることを示した。本稿では、従業員理解を高度化することで、組織と従業員双方にどのような価値をもたらせるのかを探る。

従業員のやる気を高めているものは何か

「人材こそが最大の資産である」と企業のリーダーたちはつねづね語っている。しかし、多くの企業は依然として、従業員を業務運営に必要な数ある投入物の一つであるかのように仕事を設計しており、その結果、「最大の資産」は不満を抱え、やる気を失っている。企業は顧客を理解することにおいては達人となった。カスタマージャーニーを可視化し、顧客行動を分析し、予測分析を用いて驚くべき精度でニーズを先読みする。ところが、その顧客体験を創り出している当の従業員を理解することにおいては、依然として直感や表面的なデータ、あるいはたまに行う一般的なアンケート調査に依存している。

 このギャップを埋めることは可能であり、かつ極めて有効だ。北米に数百店舗を展開するあるアパレル小売企業で、我々はこれを目の当たりにした。同社は顧客体験に焦点を当てた変革を始動させていた。経営陣は、顧客と店舗の成果を向上させる取り組みの成否が、最終的には現場従業員にかかっていることを認識しており、モチベーション、満足、そして喜びがそのパズルの重要なピースであると理解していた。しかし、どのように数百店舗にわたって従業員のニーズを把握し、それに基づいて行動を起こすべきか悩んでいた。

 筆者のロビッチとジョリーが共同で率い、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のコンサルタントとハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の学生で構成された我々のチームは、従業員に制限なくアクセスできる許可を得た。同小売企業の従業員の90%以上が、働く動機、自身の仕事の有効性に対する認識、タスクごとの楽しみや喜び、満足度、そして日常業務の時間配分を調査するアンケートに参加した。我々は、この詳細かつ大規模な従業員データと、数十件に及ぶ店舗でのインタビューや視察から得た独自の観察結果を統合した。そして、一般的な従業員意識調査データとは異なり、個々の回答を、その従業員および関連する店舗の業務成果、顧客成果、財務成果に直接結びつけることができた。

 これらの分析手法は、顧客インサイトの方法論を従業員に適用するツールを使用して構築された。顧客分析で一般的に用いられる統計的トーナメント法やセグメンテーションを用いることによって、従業員間の重要な相違を明らかにし、それぞれ独自の特徴、ニーズ、業績を持つ志向セグメントに分類した。経営陣は初めて、従業員の心の奥底を深く見通すことができた。彼らが口だけで「重要だ」と答えたことだけでなく、実際に動機づけや原動力となっているものを把握できたのである。そして重要な点として、それらを定着率、時間当たり売上げ、顧客満足度などの具体的な成果指標と結びつけることができた。

 本調査が明らかにした従業員の喜びとパフォーマンスの関係、および同社のリーダーたちが職場での喜びを高めるために講じた施策について、以下に紹介する。

従業員の喜びがパフォーマンスを高める

 筆者らは、喜びを測定するため「仕事は楽しいですか」と尋ねた。この質問を選んだ理由は、直感的で答えやすく、かつ仕事における喜びの源泉が人によって異なるという点で柔軟性があるからだ。