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従業員のやる気を高めているものは何か
「人材こそが最大の資産である」と企業のリーダーたちはつねづね語っている。しかし、多くの企業は依然として、従業員を業務運営に必要な数ある投入物の一つであるかのように仕事を設計しており、その結果、「最大の資産」は不満を抱え、やる気を失っている。企業は顧客を理解することにおいては達人となった。カスタマージャーニーを可視化し、顧客行動を分析し、予測分析を用いて驚くべき精度でニーズを先読みする。ところが、その顧客体験を創り出している当の従業員を理解することにおいては、依然として直感や表面的なデータ、あるいはたまに行う一般的なアンケート調査に依存している。
このギャップを埋めることは可能であり、かつ極めて有効だ。北米に数百店舗を展開するあるアパレル小売企業で、我々はこれを目の当たりにした。同社は顧客体験に焦点を当てた変革を始動させていた。経営陣は、顧客と店舗の成果を向上させる取り組みの成否が、最終的には現場従業員にかかっていることを認識しており、モチベーション、満足、そして喜びがそのパズルの重要なピースであると理解していた。しかし、どのように数百店舗にわたって従業員のニーズを把握し、それに基づいて行動を起こすべきか悩んでいた。
筆者のロビッチとジョリーが共同で率い、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のコンサルタントとハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の学生で構成された我々のチームは、従業員に制限なくアクセスできる許可を得た。同小売企業の従業員の90%以上が、働く動機、自身の仕事の有効性に対する認識、タスクごとの楽しみや喜び、満足度、そして日常業務の時間配分を調査するアンケートに参加した。我々は、この詳細かつ大規模な従業員データと、数十件に及ぶ店舗でのインタビューや視察から得た独自の観察結果を統合した。そして、一般的な従業員意識調査データとは異なり、個々の回答を、その従業員および関連する店舗の業務成果、顧客成果、財務成果に直接結びつけることができた。
これらの分析手法は、顧客インサイトの方法論を従業員に適用するツールを使用して構築された。顧客分析で一般的に用いられる統計的トーナメント法やセグメンテーションを用いることによって、従業員間の重要な相違を明らかにし、それぞれ独自の特徴、ニーズ、業績を持つ志向セグメントに分類した。経営陣は初めて、従業員の心の奥底を深く見通すことができた。彼らが口だけで「重要だ」と答えたことだけでなく、実際に動機づけや原動力となっているものを把握できたのである。そして重要な点として、それらを定着率、時間当たり売上げ、顧客満足度などの具体的な成果指標と結びつけることができた。
本調査が明らかにした従業員の喜びとパフォーマンスの関係、および同社のリーダーたちが職場での喜びを高めるために講じた施策について、以下に紹介する。
従業員の喜びがパフォーマンスを高める
筆者らは、喜びを測定するため「仕事は楽しいですか」と尋ねた。この質問を選んだ理由は、直感的で答えやすく、かつ仕事における喜びの源泉が人によって異なるという点で柔軟性があるからだ。
分析から明確なテーマが浮かび上がった。職場における従業員の喜びは、パフォーマンスの原動力であるということだ。喜びの度合いが最も高かった従業員は、モチベーションが非常に高く、転職を考える可能性がはるかに低かった。これは、年間離職率が60%を超えることもある小売業界において極めて重要である。仕事を楽しんでいる従業員は、複数年にわたり1時間当たりの売上高が25%高かった。喜びの度合いが高い従業員が多い店舗では、顧客体験も向上していることがNPS(ネット・プロモーター・スコア)やCSAT(顧客満足度)の高さに反映されていた。結果として、喜びは経営陣が最も重視する成果の至るところにその痕跡を残していたのである。
また、この分析により、ほとんどの従業員調査ではわからないある事実も明らかになった。それは、人材の定着とサポートにおいて、給与・福利厚生・勤務時間といった処遇よりも、「評価されている」「支えられている」といった感情面のニーズのほうが重要だったことである。新しい仕事において何が重要かを直接尋ねると、当然ながら給与や勤務条件といった機能的ニーズが上位を占めた。しかし、消費者調査のような高度な相関分析により、定着率とパフォーマンスの真の予測因子は、学習と成長、価値を認められているという感覚、有意義な仕事、明確な昇進の機会といったものであることが明らかになった。感情的なつながりは、単にあればよいというものではなく、不可欠な要素であった。
さらに、高度な従業員セグメンテーション分析により、微妙な差異がより明らかになった。それぞれに異なるモチベーションと業績を持つ8つの従業員セグメントが浮き彫りになった。これらのセグメントにはそれぞれ固有のニーズ、体験、課題があり、職場での喜びとモチベーションを高めるためには、これらを理解することが重要だった。
従業員の半数は、喜びとパフォーマンスが高いセグメントに分類された。
・志の高い見習い(Aspiring Learners):スキルアップとキャリアアップを求めて入社した目的意識の高い駆け出しの従業員。喜びとモチベーションが高いと回答しており、全体としては少数である。
・堅実な努力家(Committed Climbers):同社での勤続を見据える中堅のアソシエート。高い成果を上げ、これまでの成長に満足しており、スキルアップとワークライフバランスを重視している。
・忠実な両立者(Devoted Balancers):子育てや介護と職務への強いコミットメントを両立させている従業員。柔軟性とパーパスを動機とし、継続的な成長を望んでいる。
・野心的なベテラン(Driven Veterans):モチベーションの高い経験豊富な正社員。管理職を目指すことが多く、難題に挑むことや明確な枠組みを好む。
・熟練のパイプ役(Seasoned Connectors):主にキャリア後半のアソシエートで、ブランドへの愛着が強く、顧客との交流を好む。どのセグメントよりも売上高が高く、現在の役割に対して強い忠誠心と満足感を表明している。
残りの半分は、喜びとパフォーマンスが低いセグメントに分類された。
・スタイル先行型(Style Seekers):ブランドやファッション性に惹かれてきた若いパートタイム従業員。成長の機会が限られ、自身の価値が十分に評価されていないと感じている。
・無関心な腰掛け組(Detached Dabblers):学校など他の活動との両立を図るため、勤務時間の柔軟性を求めてこの仕事を選んだ若めのアソシエート。
・伸び悩む稼ぎ手(Stalled Earners):収入を主たる動機とする。年齢層をまたいで存在し、喜び、満足度、機会に恵まれているという認識が最も低い。
後者の3つのグループに属する従業員は、概して若く、パートタイム勤務が多く、機能的ニーズによって動機付けられる傾向にあった。彼らは柔軟な働き方や収入を重視していたが、過小評価されている、十分に育成されていない、あるいは組織とのつながりを感じられないと感じていた。満たされていない感情的なニーズは、満足度の低さ、業績の低迷、そして離職意向の高まりとして表れていた。
経営陣が特に驚いたのは、次の洞察であった。最も高業績の販売セグメントは、主にキャリア後半のパートタイム従業員で構成されており、彼らはブランドを愛し、人が好きで、顧客とのつながりに深い意味を見出していた。これらの従業員が求めていたのは、昇進や最適な勤務スケジュールではなく、敬意、コミュニティ、そして意義ある仕事であった。そして、彼らは並外れた成果を上げていた。
またこの調査では、どこで喜びが生まれ、どこで失われるかも明らかになった。従業員は一貫して、顧客とのやり取り、研修、能力開発に活力を見出していた。しかし、こうした活動に費やす時間は、望み、期待していたよりもはるかに少なかった。一部の店舗では、販売アソシエートの接客時間は勤務時間の40%未満だった。バックオフィス業務、事務作業、反復的なプロセスが、喜びとパフォーマンスを高める活動から従業員を引き離していた。このミスマッチこそ、ワークフローを再設計する絶好の機会であり、経営陣にとって警鐘となると同時に有益な発見であった。
最後に、従業員を喜びの度合いの高いセグメントに転換させることによる財務上のメリットを定量化した。喜びの度合いの高い従業員の割合がわずか1%ポイント増加するだけで、年間総売上高の約0.25%に相当する売上増につながることがわかった。シミュレーションによれば、喜びの度合いの高い従業員をより多く定着させ、喜びの度合いの低い従業員を転換し、適性の高い人材を採用することで、同社は年間売上高を5~15%押し上げることが可能となる。喜びは文化的なメリットに留まらず、経済的にも見逃せないものであった。
成果を生み出す共創の方法
重要なのは、同社の経営陣が単にこれらの調査結果を持ち帰り、密室で対応策を考えたのではない点だ。我々は従業員の代表者グループに調査結果を見て議論してもらい、満たされていない共通のニーズに対応するために同社が実施できる大小の変更についてブレインストーミングしてもらった。
提案の中には、担当業務の明確化、チームワークを促進するためのインセンティブの見直し、そしてマネジャーがささやかな方法で感謝の意を示すための少額予算を継続的に提供することなどが含まれていた。マイルストーンの達成を祝ったり、繁忙期に軽食や飲み物を提供したりすることは、従業員が(若年層もベテランも、新入社員も古参社員も)愛するようになった協力的な文化の重要な要素として挙げられていた。
この従業員中心の共創プロセスは極めて有効である。これにより、解決策の実効性が高まり、変革への取り組みに対する従業員レベルの支持が得られ、従業員は自分の意見が大切にされていると感じられるようになる。
現在、事業部門と人事部門の両方のリーダーが、分析と共創のセッションで得た知見に基づいて行動を起こしている。データを活用した採用活動の改善、人員構成の調整、セグメント別の能力開発、管理職の個別研修、キャリアパスの可視化、そして何よりも、従業員が好む顧客対応業務により多くの時間を費やせるよう、ワークフローの再設計を実施している。
この取り組みが事業部門のリーダーと人事リーダーの両方によって推進された点に留意すべきである。店舗運営責任者や経営幹部は、これらの知見を活用して人員配置、研修、業績管理、そして同社の変革戦略の継続的な展開に関する意思決定を行っている。従業員体験は、全社共通の戦略的優先事項となった。
生み出しうる価値
仕事における喜びと実際の営業生産性を結びつけることができたため、従業員が仕事を楽しんでいるかどうかにどれだけの価値がかかっているのかを、理論上ではなく具体的に示すことができる。喜びの度合いが高い従業員の売上高は、低い従業員より平均して1時間当たり25%高い。喜びの度合いの高い従業員と低い従業員の比率を改善するための施策を複数組み合わせることで、同社の総売上高は年に5~10%増加する可能性がある。
この調査は、各セグメントの具体的な満足要因と不満要因を明らかにすることで、どの層をターゲットにし、どのようにアプローチすべきかというロードマップを提供している。この情報をもとに、同社は現在、顧客および財務面でのメリットが見込まれるセグメント別の戦略を策定している。
同社の事例は、顧客に対するのと同じ厳格さで従業員を理解することの重要性を浮き彫りにしている。これは、従業員に対して高度な顧客分析手法を適用し、従業員の喜びの真の要因を明らかにし、現場チームをセグメント化し、測定可能なビジネス価値を引き出すために業務を再設計した、類を見ない初の事例である。仕事のあり方に対する機能的および感情的な側面からのアプローチを通じて、仕事の喜びを意図的に育むことができることを示している。また、従業員セグメントごとに、活躍するために必要なものが異なることも浮き彫りにしている。そして、組織が単なるインセンティブの改善に留まらず、よりよい仕事を設計できるよう支援するものである。
企業が顧客について知るのと同じくらい従業員について深く理解するようになれば、ビジネスにとって、そして何よりも、そのビジネスを実現する人々にとっての価値を引き出すことができる。
筆者らは、本調査に貢献した以下の個人に感謝の意を表したい。調査当時HBSのMBA生であったグレース・パーカーとジョー・キム、およびBCGのケイリン・グリフィス、エルサ・ハユン、ヴァレンティナ・タルツィハン、アリソン・ウィリアムズである。
"Leaders Underestimate the Value of Employee Joy," HBR.org, March 24, 2026.







