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合意形成による意思決定の2つの重大な欠陥
AIは組織に存在をかけた変革を迫っている。多くのリーダーは、自社が適応を余儀なくされることを受け入れるだろう。ただし、そのためには半世紀にわたって広く浸透してきた経営原則の一つ「コンセンサス(合意形成)による意思決定」を放棄しなければならないことを、素直に認める人はほとんどいない。
今後10年を生き残る企業は、最も優れたアルゴリズムや最も多くのデータを持つ企業ではない。意思決定のあり方を変える勇気を持つ企業である。
合意形成型マネジメントも、その全盛期は複雑性に対する合理的な対応だった。組織が巨大化し、グローバル化が進んで、専門分野が細分化され、知識労働が肉体労働に取って代わるにつれて、初期の産業経営に見られたトップダウン型の構造は、分散型意思決定やステークホルダーの調整、そして「社会化された」選択へと移行した。過去50年間の地理的な広がりと、それ以前の非同期的なコミュニケーション環境を考えれば、大規模なグローバル企業が分散型意思決定へと移行したのは当然である。遠隔地の組織単位にある程度の独立性を持たせることは、デジタル以前の世界では不可欠だった。こうして合意形成は現代組織の代名詞となった。
ただし、このアプローチには重大な弱点が2つある。
第1に、スピードである。意思決定は、法務、マーケティング、広報、IR、リスク管理、コンプライアンスといった多くの部門を経由する。それぞれの部門が個人および組織のリスクを軽減するように動機づけられているため、大胆なイニシアティブは角を削られ、反応は鈍くなり、組織はスピードより防御可能性を最適化する。デジタルにおける透明性が求められる時代に、CEOを除いて、責任を複数の委員会に分散させることは、失敗して公にさらされる批判からリーダーを守る。合意形成型マネジメントとは、穏やかな水面のような文化である。協調的で、リスクを回避し、スピードより安定を重視するように最適化されている。
第2に、情報がゆがめられる。筆者らが数多くの企業再生に携わってきた中で、企業にとって最も危険な脅威は、情報がマネジメントの階層を上がっていく過程で現実が体系的にフィルタリングされることだ。合意形成プロセスの各段階において、情報はゲートキーパーによって取捨選択され、解釈され、シグナルは劣化していく。最終的に経営トップに届く頃には、情報は整えられ、滑らかにされ、最適な戦略の重要な手掛かりを含む弱いシグナルは取り除かれている。しかもリーダーはその出力を信頼してしまうのだ。その結果が、筆者らが「サクセス・シアター」(成功の演出)と呼ぶものである。週次ダッシュボードや部門別レポートは、現状維持に自分のキャリアをかける中間管理職がつくり上げたものだ。
AIは私たちを荒波に突き落とし、これらの弱点を重大な欠陥へと変える。スピードについては、企業が活動できるスピードを、活動しなければならないスピードをAIはいっきに加速させる。情報の歪みについては、AIが意思決定サイクルを加速させるほど、フィルタリングされて劣化した情報に依存する、つまり合意形成型マネジメントが生み出すゆがみに依存して行動することが重大なリスクになる。
これら2つが相まって、組織は動きが遅く、何も見えていない状態に陥る。どのような時代でも危険な組み合わせだが、AI時代においては致命的だ。
これからの成功を左右するのは組織の俊敏性である。シグナルを特定し、意思決定を行い、実行に移すスピードにかかっている。既存企業は合意形成から脱却して、AI時代に適した意思決定の構造と手法を中心に組織を再編する必要がある。
これは、けっして簡単なことではなく、多くのリーダーが気後れするのも無理はない。ウォルマートやコカ・コーラのCEOは、AIへの移行の規模を突きつけられて、次世代のリーダーにバトンを渡す決断をしたと語っている。ただし、この変革に「やらない」という選択肢はない。本稿では、筆者らの経営実務家、コンサルタント、投資家としての経験をもとに、リーダーがいまこそ取るべき行動を提言する。







