結局のところ、未来のことは誰にもわからない。「どうなるか」を考えても、所詮はやってみなければわからない。経営には「こうしよう」しかないはずです。

 最近の話で言えば、中国で資生堂は堂々と朗らかに商売をしていると思います。こんなにいい商品です、綺麗になりたいですよね、では私たちが綺麗して差し上げましょう、うちがなんたっていちばんですよ!という、非常にシンプルな意志と自信があってやっている。

 流通では、コンビニのグローバル展開が早いのも、「こんなに便利なもの、アジアの方々もいかがですか?」というところがある。これに反して、百貨店のグローバル化が進まないというのは、経営の根本のところにそうした意志がないからです。「日本のマーケットが縮小したから、~せざるを得ない」って言っている。それでは何も起こるわけがありません。

 昔のホンダ、ソニーのような会社は、まだまだ日本にいっぱいあります。日本企業はグローバル化に後ろ向きだって言われていますが、古色蒼然たる大企業ばかり見ているからそう見えるわけで、新陳代謝は確実に進んでいます。もっと新しい、ワクワクすることをやっている企業に目を向けるべきです。

 例えば、プラン・ドゥ・シーという会社を、ご存知ですか? 若い人だったらたいてい知っています。「おもてなし」をコンセプトとしたホテルやウエディングサービスの会社です。

 この会社はまったく素晴らしい。なにしろ働いてる人の顔がいい。みな笑顔で堂々としている。仕事を楽しんでいる。ノリがいい。なんだかんだ言って、これがいちばん簡単な見分け方です。「せざるを得ない」と言う人との違いは、イイ顔で仕事をしているかというところです。経営者も含めて。

 彼らは日本人が自然と持っている「おもてなし」の精神からくるサービスに自信を持っていて、こんなにいいものなら、外国にも持って行こうぜっていう、徹頭徹尾内発的な動機でグローバル化に取り組もうとしている。

 経営者の野田豊加さんは、世界中を旅行して、各地で一流のホテルに泊まっているそうですが、どこに行っても、接客相手への配慮や日本のもてなしのきめ細やかさにはまったく及ばないと感じている。バリのヴァンドームにあるパークハイアットでも自分たちと比べればまだまだ粗いという話です。

 彼らが自信を持って日本で培ってきたおもてなしは、ある種日本の天然資源です。ようするに石油が出る出ないというのと同じで、日本だと当たり前でも、海外だと希少資源なわけです。

 今も昔もいちばん有効な競争力のひとつは天然資源。過去のグローバル化にしてもそういう強みが無意識のうちに効いていた。昔の自動車産業にしても、さらにその前の機械部品にしても。

 いまでも、そうした日本の「天然資源」を強みにしたグローバル化は、あちこちで起きています。そうした会社に共通している特徴は、自信を持っていること、自由意志を立脚点としているということ。当たり前の話ですが、自分たちで面白くなければ、人が面白がるわけがない。顧客に価値を与えられるわけがありません。

 顔をあげて堂々と行きましょう!

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