米国内で半導体サプライチェーンを完成させるための3つの方策
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サマリー:米国では半導体製造拠点の国内回帰が進んでいるが、検査やパッケージングなどの後工程は依然としてアジアに集中しており、サプライチェーンの大きな弱点となっている。高コストや人材不足などを背景に後工程の国内回帰は進んでいないのだ。本稿では、この課題を克服し、米国内で完結する半導体エコシステムを構築するための3つの方策を紹介する。

半導体製造の後工程はアジアに集中している

 米国は、先端半導体の製造拠点を国内に呼び戻すために巨額の投資を行っている。いま米国各地に新しい工場が相次いで建設されており、台湾の半導体大手TSMC(台湾積体電路製造)のアリゾナ州の新工場では、世界最先端の半導体が生産される。

 だが、こうした進展はあるものの、米国はいまも半導体製造のバリューチェーンの重要な部分を他国に大きく依存している。その工程とは、半導体製造の後工程(バックエンド)、つまり、前工程(フロントエンド)で回路を形成したシリコンウエハーを完成品の半導体チップに仕上げる工程を担う工場のことだ。

 ウエハーを点検し、それを個々のチップに切断し(「シンギュレーション」と呼ばれる)、パッケージングして、検査を行う──こうした工程は、1970年代に米国外に出て行ってしまった。労働集約度が極めて高い工程だからだ。長い間、米国で半導体を製造してきたインテルのような企業も、それらの大半をパッケージングのためにマレーシア、ベトナム、中国へ送っている。

 2022年に成立した法律であるCHIPSおよび科学法は、インテル、TSMC、サムスンセミコンダクターマイクロン・テクノロジーズテキサス・インスツルメンツなどの企業に、米国内に新しい半導体工場を建設するよう促すために、幅広い補助金を用意した。その補助金の支給対象には、パッケージング工場を建設する企業も含まれている(SKハイニックスがインディアナ州に建設予定であり、アムコア・テクノロジーがアリゾナ州にパッケージング工場を建設中だ)。

 しかし、これらはあくまでも例外的な存在だ。米国内に半導体製造のエコシステム全体をつくり出すにはほど遠い。

 筆者らが最近行ったインタビュー調査に対して、半導体のサプライチェーンを構成する8つの有力企業──世界最大手のパッケージング企業2社、複数の設計企業、1社のファウンドリー(受託生産企業)、複数のエレクトロニクス製品メーカーなど──のマネジャーたちによれば、こうした状況になっている原因は主として経済的要因にあるという(インタビューに応じたマネジャーたちは全員、匿名を希望)。

 マネジャーたちのコメントが浮き彫りにするのは、半導体製造のエコシステムの中でも後工程の利益率が低く、労働集約度が高いという実態だ。この後工程と呼ばれるプロセスは、脚光が当たりやすいウエハー製造のプロセス、つまり前工程を補完するために欠かせない。

 これらのインタビュー調査、そして本稿の筆者の一人であるシーがバイデン米政権下で商務省の産業諮問委員会に参加した際の活動、さらにシーが現在取り組んでいる研究を基に、筆者らはこの問題を解決するために有効と思われる3つの対策を見出した。それは、顧客企業がリスクのコスト評価の仕方を改めるよう促すこと、北米における地域レベルの貿易ルールを変えること、そして需要サイドのインセンティブ制度を新設することである。

なぜ後工程はほぼアジアに留まったままなのか

 半導体製造の前工程においては、ウエハーに回路のパターンが刻み込まれる。この工程は半導体の製造工程の中でもよく知られている工程であり、米国政府の政策はおおむねこの工程に目を向け、ここに巨額の資金をつぎ込んできた。