役員からの予期せぬ質問に、優秀な人はどう答えるか
Inti St. Clair/Getty Images
サマリー:エグゼクティブからの突然の質問に対し、多くの人は事実やデータで答えようとする。しかし、意思決定者が本当に求めているのは情報そのものではなく、その背後にある懸念や判断材料に対する回答である。どれほど正確な説明でも、相手の意図に応えていなければ不安は解消されない。筆者は、経営層の質問の背景には共通する3つのニーズがあると指摘する。

突然のエグゼクティブからの質問に戸惑う時

 あなたは、自分の事業部門のリーダーと隣のチームのシニアメンバーに、あるプロジェクトのロードマップをプレゼンしている。1週間以上かけて準備をしてきたから、その計画には自信がある。ところが、スライドがまだ半分残っているところで、あなたの部門のトップが、「そういえば、レガシーシステムの移行はどうなっているのですか」と質問をしてきた。あなたはトラッカー(進捗管理シート)を開き、各工程の関連性を説明し、現在の開発サイクルにも触れた。トップはうなずいたが、さらに質問してきた。「12月の価格決定実験はどうなったのですか」。そこであなたはまた、すべてのデータを示す。

 そのミーティングが終わった時は、すべてがうまくいっているように見えたが、上司との次の面談で、こう言われた。「ところで、先日のロードマップに関するミーティングの後、(部門トップの)アナに呼び止められました。マイグレーションと価格体系の現状には不安がある、と」。あなたはいら立ちを覚え、「すべての情報を伝えたのに、何が問題なのだろうか」と考える。

 エグゼクティブに突然質問されて、窮することは誰にでもある経験だ。取締役に呼び止められることもあれば、直属の上司を飛び越えて上から現状の評価を迅速に求められることもあるかもしれない。相手は即答を求めている。あなたの回答が、チームが資金を確保できるかどうかや、プロジェクトが前進するか、あるいは、あなた自身の昇進に影響を与えるかもしれない。

 そのような時、回答は事実だけに留めて、あらゆる要素をカバーしておこうと思うのが自然な反応かもしれない。だが、極めて詳細な回答でさえ、そもそもエグゼクティブがなぜその質問をしてきたのかに応えていなければ、逆効果になりうる。意思決定者は、単に情報を渡されるのではなく、自分のより深い動機や懸念に応えてほしいと考えている。

 筆者はエグゼクティブコーチとしての経験から、エグゼクティブの質問の背景には通常、次の3つのニーズがあることを発見した。

安心:「これは管理されているか」

 多くの場合、現状報告を求める(ように見える)質問は、実のところ安心を求めている。エグゼクティブは、心配する必要はなく、予想外の事態は生じないことを知りたいのだ。たとえば、競合他社や規制変更がニュースになった後、突然上から現状の確認要請が入るかもしれない。あるいは四半期の初めに、一見したところ気軽に「調子はどう」と聞いてくるのは、彼らが自分の上司に報告する前に、状況を把握しようとしているのかもしれない。

 安心が求められている時は、まず要点を伝え、具体的な根拠を一つ提示し、新たな進展があれば報告すると伝えよう。具体的には次のような言い方ができる。

・「数字は順調です。目標を10%超えるペースです。次の営業会議までに変化があったらご報告します」

・「こちらには特に懸念事項はありません。チームは先週、最優先課題2つを解決しました。あなたの判断が必要な重要事項が生じたら、ご連絡します」

・「すべて対応済みです。早い段階で問題を把握し、修正プログラムも手配済みです。完了したらご連絡します」

手掛かり:「これをどう考えるべきなのか」 

 エグゼクティブはこの質問によって、自分を方向づけようとしている。リスクや機会や展開について、あなたの意見を聞くことで、自分がそれを理解したいのだ。スタッフミーティングで、バイスプレジデントが各リーダーに、次の優先課題に対するアプローチを尋ねるかもしれない。あなたの上司は、他部署からの提案を転送してきて、「どう思いますか」と尋ねてくるかもしれない。ひょっとすると、複数の部門を担当するパートナーが、「これについて直観的にどう思いますか」と尋ねてくるかもしれない。

 手掛かりを求められている時は、最も重要な情報を抽出して、自分ならどうするかを伝えよう。たとえば、次のような言い方ができる。

・「私の見解はこうです。2つのマイルストーンで遅れが出ましたが、チームが挽回する現実的な計画があります。私なら現在のスケジュールを維持し、月末に再評価します」

・「スピードかコストのどちらかを優先する必要があると思います。両方を取ることはできません。私ならばスピードを選びます。なぜなら(中略)だからです」

・「このアイデアは技術的には妥当ですが、製品チームに伝えずに進めると、彼らを不快にさせるおそれがあります。私なら承認はしますが、彼らと話す時間を確保するために、開始時期をずらします」

アクション:「私は何をすればよいのか」

 これは情報収集の質問のように聞こえるかもしれないが、実のところそのエグゼクティブは、自分が何かする必要があるのか判断しようとしている。法務部門を巻き込むべきか。スケジュールにもっと余裕を持たせるべきか。顧客への期待を見直すべきか。こうしたニーズが質問から明らかなこともある。たとえば、意思決定者が、「きみの障害を取り除くために何が必要か」とか「これを前進させるために私に何ができるだろう」と尋ねる場合だ。あるいは、「オーケー、次のステップは何ですか」とか「これをどう伝えればよいのか」といった間接的な尋ね方をする時もある。

 あなたの仕事は、自分が必要としていることと、その期限を説明することだ。

・「状況を前進させるのに助かることが一つあります。経理部のロバートに発注書を通すよう伝えていただけませんか」

・「もっとも助かるのは、来週の運営委員会の最初の15分間に出席していただくことです。あなたがいれば、この件は真剣に受け止められるべきだと示せます」

・「火曜日に全社員宛てにメールを送る予定です。その前にメッセージの内容を確認していただく必要があります。今週中にお願いできますか」

 質問の背景に3つのニーズのどれがあるか見極められるようになれば、ほぼすべてのエグゼクティブの要請を瞬時に把握して回答することができ、ますます影響力のある人物として見られるようになるだろう。


"When an Executive Asks You an Unexpected Question," HBR.org, May 05, 2026.