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顧客が既存サービスをもとに、独自の利用方法を開拓している時
既存の製品やビジネスモデルでは足りない部分を補うために、顧客が独自の運用方法や解決策を編み出すことは珍しくない。顧客がアカウントを共有する、従業員が業務に個人のサブスクリプションを利用する、チームがサードパーティ製のツールを組み合わせて使うといった「ワークアラウンド」と呼ばれる行動だ。
企業は通常、こうした行動をわずらわしい問題やコンプライアンス違反、あるいは製品改善のヒントとして捉える。たとえば、公式の業務システムでは実務に合わないために、ユーザーが複雑なスプレッドシートや手作業のプロセスをつくり込むことがある。企業はこうしたフィードバックを受けて、次のリリースで機能改善を図る。
しかし、顧客によるワークアラウンドが示すのは、単なる製品の機能不足ではない。むしろそれは、顧客自身がすでにつくり上げている「もう一つのビジネスモデル」の存在だ。アクセスや利用、支払いの方法について、企業の公式のモデルが自分のニーズに合わなくなった結果、顧客が独自に組み立てた非公式な仕組みである。これが生まれている時点で、顧客はすでにプロトタイプをつくり、対価を払う意思を示し、新しいビジネスモデルを実質的に成立させている。彼らは金銭の代わりに時間と手間をかけることで、そのギャップを埋めているのだ。
こうしたギャップを、「ビジネスモデルの空白」と筆者らは呼んでいる。顧客が望むアクセスや利用、支払いの形と、企業のモデルが一致しない時に生じるマネタイズのギャップだ。
ビジネスモデルの空白はどのように生まれるか
ビジネスモデルの空白は、3つの段階で顕在化する。ミシュランの事例で見てみよう。同社は2000年、タイヤの販売から「タイヤの性能」の販売へと転換し、運送事業者が走行距離に応じて料金を支払う「ミシュラン・フリート・ソリューション」を導入した。革新的ではあったが、顧客の実態よりも自社の提供価値に軸足を置いたものだったため、ビジネスモデルの空白は20年近く存在した。
第1段階では、顧客がミスマッチを感じる。運送事業者は、単にタイヤコストを下げたいのではなく、燃費やルート設計、ドライバーの行動といった収益を左右する要因と一体で管理したいと考えていた。
第2段階では、顧客が自分たちの手でワークアラウンドを設計し始める。ミシュランのケースでは、運送事業者が複数のテレマティクスベンダーのサービスをつなぎ合わせ、手作業でデータをエクスポートし、連携していないダッシュボードを自前で運用していた。こうした一つひとつのワークアラウンドは、明確なシグナルだった。顧客は製品そのものを拒んでいたのではなく、自分たちの負担で既存のビジネスモデルを補強しようとしていたのだ。
第3段階は、他社がその空白を埋めに入り込むか顧客が離れていくという、企業にとっては避けたい局面だ。ミシュランの場合は、2020年に「ミシュラン・コネクテッド・フリート」を立ち上げることで、この段階を先回りして封じ込めた。運送事業者がそれまで自前で構築していた仕組みそのものを、プラットフォームとして提供することにしたのだ。同社が最近公開した情報によれば、このサービスの契約対象車両はすでに100万台を超えている。
ビジネスモデルの空白を埋めるための戦略的なステップ
すべてのビジネスモデルの空白が、企業の思惑通りに解消されるわけではない。その兆候を見つけること自体が難しく、競合企業より先にそれを埋めることはさらに難しい。AIコーディングアシスタント「ギットハブ・コパイロット」は2021年、ユーザー数に応じた課金モデルとして立ち上がり、当初はそのモデルで十分に機能していた。しかし、開発者たちはより多くのものを求めるようになった。モデルを選びたい、コードベースのコンテキストをより深く反映させたい、エージェントのように自律的に動いてほしい、というようにだ。そこで開発者たちは、サードパーティのツールを導入し、コードを外部のチャットに流し込み、より高速なモデルの利用料を自腹で支払うようになった。ギットハブもその動きに気づいてはいたが、対応は後手に回った。
それとは対照的に、AIコードエディタ「カーソル」は、こうした変化を見逃さなかった。サブスクリプションと利用量に応じた課金を組み合わせ、利用量の増加に合わせて収益も大きくなるモデルを採用した。その結果、2025年半ばまでに年間換算で約5億ドルの収益を達成し(その後はその数倍に拡大)、本来コパイロットがカバーしていたはずの開発者に対してプレミアムな価格設定で提供している。







