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生成AIは本当にSaaSプロダクトの価値を低下させたのか
過去20年間、SaaSは業務フローのデジタル化を通じて成長してきた。CRM(顧客関係管理)システムは販売活動を記録し、フィールドサービス向けプラットフォームは業務スケジュールを調整し、顧客履歴を参照し、アップセルの機会を営業へフィードバックする。このモデルは不透明で整理されていない情報を取り込んで、それを現場の人が使える形にして提供することで、価値を創出してきた。AIコーディングツールが登場する前は、これに匹敵する機能セットを自社で構築できる立場にあるSaaS顧客企業はほとんどなかった。
生成AIはそうした状況を変えた。いまや、最先端モデルやAIコーディングツールによって、企業はこれまでSaaSベンダーから購入していた機能を自社で構築できるようになった。筆者がインタビューした数人の経営幹部は、外部ベンダーへの支出を大幅に削減できる社内ツールを、すでに承認していた。
2026年初頭、高度なAIエージェントのリリースをきっかけにソフトウェア関連株が急落した出来事(一部の市場関係者はこれを「SaaSpocalypse」[SaaS黙示録]と呼んだ)は、もっともらしく思える一つの見方を強化した。それは、AIでソフトウェアを開発・自動化できるのであれば、大半のSaaSは自社でつくり直すか、AIツールによる開発コストの低下を価格に反映した新しいベンダーに乗り換えるべき、というものだ。
だが、SaaSプロダクト市場に関する筆者の調査に基づいて言うと、その結論は単純化しすぎている。市場も経営陣の多くも、多種多様なソフトウェアを同じものであるかのように捉えているが、実際はそうではない。上場しているSaaS企業45社について、各社のフォーム10-K(公開企業が米国証券取引委員会への提出を義務づけられている年次報告書)やその他の開示情報を分析したところ、ソフトウェアに求められる作業と、それを支えるデータの種類によって、同じSaaSカテゴリーでも大きな違いがあることが明らかになった。特に、複数の顧客・利用者から収集してプールされたデータを基盤とし、予測タスクを実行するタイプのSaaSは、メディアの報道が示唆する以上に、すでに市場で価値を認められていることがわかった。
本稿では、経営幹部がSaaSの現在の状況を理解する一助として、筆者自身の調査結果と、AIを活用したSaaS企業、ブルオンとの仕事で培った経験に基づいた情報を提供する。企業が外部ベンダーへの支出を継続すべきか、再交渉すべきか、統合・集約すべきか、それとも社内でSaaSツールを開発すべきかを評価するための枠組みを提供したい。
SaaSについて、十分な情報に基づいて意思決定する
企業は、今後購入する可能性のあるSaaSプロダクト、または現在使用しているSaaSプロダクトを評価する際、防御力(自社で再現できないものには防御力があって、自社で再現できるものには防御力がない)の2つの源泉を考慮すべきである。その源泉とは、専有コンテキストとネットワーク効果だ。どちらも備えていないベンダーは競争にさらされやすい。ネットワーク効果を持つビジネスについては、長年、詳細に分析されてきたが、ネットワーク効果を活用するプラットフォームを、SaaSの顧客企業が自力で構築することはほとんど不可能である。したがって、本稿では、ネットワーク効果が専有データの収集を促進する可能性もあることを認識しつつ、主に、どのような状況で専有データに価値があるかを理解することに焦点を当てる。
以下で紹介するシンプルな枠組みは、この問題を2つの次元に分けながら、どのツールが新規参入者や内製化によるディスラプション(破壊的変化)のリスクにさらされているか、どのツールを維持または拡張すべきか、そしてSaaS顧客企業が、各SaaSプロダクトがどれに該当するかを評価する方法を明らかにする。
2x2の4象限のマトリックスで考えてみよう。第1の軸は、タスクの性格、つまり決定論的か予測的かを表す。決定論的なシステムは、すでにどこかに存在しているデータから質問に答える。このユニットにはどの部品が合うか、先月の請求には何が含まれていたか、この保険契約では何が補償されるか、などだ。
一方で、予測的なシステムはより難易度の高いタスクに取り組む。答えがどのデータにも蓄積されていなくても、どこに誤りがある可能性が高いか、次に何が起こるべきか、どの対応が最も有望かを推測しなければならない。トロント大学教授のアジェイ・アグラワル、ジョシュア・ガンズ、アヴィ・ゴールドファーブの著作は(『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の記事を含めて)、従来型のAIと生成AIの両方を「予測問題」として捉えているが、アルゴリズムが企業の不確実性への対処を支援する状況に注目させる点で、やはり有益だ。
第2の軸は、タスクを支えるコンテキストを表す。社内コンテキストは、ツールが主に自社データを活用していることを意味する。プール型コンテキストは、ツールが多くの顧客、業務、環境、エッジケース(極めて特殊なケース)で蓄積されたパターンから学習していることを意味する。








