広告を「わずらわしい」と感じる消費者に届く、最適なアプローチ
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サマリー:デジタル広告をわずらわしく感じる消費者が増える中、視聴者に広告体験の主導権を与える柔軟なモデルへの転換が求められている。従来の「見たい広告を選ぶ」アプローチは有効だが、視聴者に認知的な負担を強いる制約がある。本稿では、広告を見るタイミングをユーザーが選ぶ新たな手法の効果を検証し、視聴者の状況や広告在庫に応じて最適なアプローチを使い分けるための3つの原則を紹介する。

広告を理由にしたサブスクの解約が増加している

 インターネット広告は、その歴史の大半を通じて、受動的に視聴するモデルで運営されてきた。消費者は画面の前に座ったまま、プラットフォームが一方的に広告を表示するという仕組みだ。

 このモデルは高い収益を生んできたが、最近は双方にとってコストが大きくなりつつある。消費者の70%はデジタル広告をわずらわしいと感じており、多くの人は1時間に5分を超える広告は許容できないと考え、約5人に1人(18%)がストリーミングコンテンツを視聴する際は常に広告ブロッカーを利用している。さらに、米国の消費者の37%が、広告を理由にサブスクリプションを解約した経験がある。2025年第1四半期だけでも、ネットフリックス、アマゾンのプライムビデオ、ディズニープラスで月間の解約件数が増加した。

 明らかに、消費者は広告を押しつけられていると感じ、うんざりしているのだ。その結果、視聴者が広告を消したり、スキップしたり、あるいはサービスそのものから完全に離れ、プラットフォームの広告インプレッションの価値も目減りしている。関心を失った視聴者がもたらすコストはけっして小さくない。

 こうした問題に対処するため、一部のストリーミングプラットフォームは、より柔軟なモデルの実験を始めている。その基本的な考え方は、ユーザー自身が広告体験をある程度コントロールできるようにすることだ。現在その主流となっているのが広告コンテンツの選択、つまり視聴者が複数の広告から見たいものを選べる仕組みだ。代表的な例として、ここ数年、複数のサービスでこの仕組みを試験的に導入しているワーナー・ブラザース・ディスカバリーや、CM中に視聴者がいくつかの広告メニューから選択できるHulu(フールー)の「Ad Selector」がある。

 広告コンテンツの選択は、直感的に理解しやすい最初の一歩であり、おそらくそのために学術研究でも広く取り上げられてきた。視聴者に主体性を返す方法として最もわかりやすく、現在の広告の制作や配信の仕組みにも無理なく組み込める。

 しかし、ユーザーに広告コンテンツを選ばせることが、プラットフォームにとって唯一の(あるいは最善の)手段というわけではない。広告コンテンツの選択は有効性が示されている一方で、その効果には代償も伴う。ユーザーに認知的な負担をかけることだ。

 たとえば、サムネイル画像やブランド名だけを手掛かりに、見慣れない広告から選ぼうとすると、それなりに判断の負担がかかる。それぞれの広告がどのような内容なのか、興味を引くものなのかを予測しながら、そもそも視聴したいストリーミングコンテンツのことも頭に留めておかなければならない。

 これは重要な制約になる。最近の研究が示すように、ユーザーは広告コンテンツを選ぶ際に、ほんのわずかでもよけいな作業を求められると、選択がもたらすエンゲージメントや注意力向上の効果が失われかねないのだ。つまり、広告コンテンツの選択が効果を発揮するのは、視聴者にそれだけの認知的な余裕がある場合に限られる。疲れていたり、気が散っていたり、何かをしながら視聴していたりする人、つまり、プラットフォームが最もつなぎ留めたい層には、そのメリットが及ばない。

 ここで大きな疑問が生じる。消費者にこうした認知的な負担を強いることがない、別の種類の「選択」はないのだろうか。見慣れない選択肢を比較検討させるのではなく、視聴者自身の好みや状況をもとに選べるような仕組みであれば、広告コンテンツの選択が機能しない状況でも、同じようにエンゲージメントを高められる可能性がある。

タイミングはコンテンツと同じくらい重要である

 筆者らが共同執筆したワーキングペーパーは、まさにこの問いを検証している。そこでは広告コンテンツの選択よりもシンプルな選択として、視聴者がどのタイミングで広告を見るかを自分で決める「広告表示タイミングの選択」を取り上げている。そこで明らかになったのは、広告表示タイミングの選択が、適切な状況において、広告コンテンツの選択と同じ程度の効果を発揮しうるということだ。その効果は広告への注意、わずらわしさ、広告想起、ブランドに対する態度など、さまざまな広告指標に及んでいた。

 これらの考えを検証するために、1300人以上の参加者を対象に3つの研究を実施した。研究1は、参加者の基本的な認識を把握するためのオンライン調査である。参加者には動画を視聴する場面を想像してもらい、1つ目のグループは広告によって視聴を中断される状況(コントロール群)、2つ目のグループは2本の広告から1本を選べる状況(広告コンテンツの選択群)、3つ目のグループは広告を見るタイミングを選べる状況(広告表示タイミングの選択群)をそれぞれ想像した。

 その結果、2つの選択群はいずれも、コントロール群より主体性を強く感じ、認知的な負担が小さいと報告した。