AIという顧客に、どうマーケティングするのか
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サマリー:ウォルマートはオープンAIやグーグルと提携し、AI上での商品検索や購入を可能にした。みずから顧客接点を手放すように見えるこの動きは、AIエージェントが新たな「顧客」となる商取引の変革を示している。人間とは異なる判断ルールを持つAIに対し、従来のマーケティング手法は通用しない。本稿では、エージェント型コマースがもたらす構造変化と、企業が「AI顧客」を攻略するために取るべき戦略を解説する。

商取引が変革期を迎えようとしている

 筆者は先日、ポモドーロ用のタイマーを探していた。チャットGPTのブラウザ「アトラス」を開いて単純なクエリを入力したところ、おすすめ商品の説明とともに、実際の商品が画像、価格、詳細付きで表示された。その多くはウォルマートが販売元だった。小売業者のウェブサイトを一つも開くことなく、質問から商品まで1度のチャットで行き着いた。

定番のトマト型の機械式タイマーをいくつかご紹介します。ポモドーロ・テクニックの着想を得るきっかけとなった物理的なゼンマイ式の機器で(このテクニックの名称自体がトマト型のタイマーに由来しています)、電池は不要です。デスクに置いて作業のインターバルを計り、休憩を取るよう通知してもらうのに最適です。(ウィキペディア)

 この検索をする2カ月前、ウォルマートはエージェンティック・コマース・プロトコル(ACP)をめぐるオープンAIとの提携を発表していた。ACPは、小売業者が商品情報のデータファイルをオープンAIと容易に共有できるようにする仕組みだ。5月にはウォルマートはグーグルと提携し、AIエージェントによる売買を可能にするエンド・トゥ・エンドのプロトコルであるユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)を導入した。

 ウォルマートの動きには驚かされた。筆者がグーグルやオープンAIのチャットインターフェース(前者はジェミニ、後者はチャットGPT)で商品の検索、発見、購入を行うのであれば、ウォルマートは顧客との関係とブランド体験を手放すことになる。同社は何十年もかけて、店舗、ウェブサイト、ロイヤルティプログラムを通じて顧客との関係を掌握してきた。消費者行動が完全に移り変わる前の段階で、しかもアマゾン・ドットコムのような競合他社が明らかに慎重な姿勢を取っている中で、なぜこれほど早々とインターフェースを明け渡すのだろうか。

 ありふれた小売提携のように見えるこの動きは、商取引が変革期を迎えようとしている兆候だ。その変革の核を成すのは、単純な視点の転換である。すなわち、ブランドはいまや新しいタイプの顧客を抱えているのだ。そしてマーケターは、それらの顧客に影響を及ぼす方法をほとんど理解していない。

新たな顧客の登場:AIエージェント

 エージェント型コマースとは、商品探しを手伝うだけでなく、自律的に購入まで完了できるAIだと考えればよい。現在、買い物におけるAIの支援には2つのモードがある。

 1つ目はAIアシスタントだ。あなたは自分の状況を説明する。「ハーフマラソンの練習をしています。足首を手術したことがあります。レースではトレイルを走ります。おすすめのシューズを教えてください」。LLMはウェブを検索してさまざまなページを読み、選択肢とリンクを提示する。評価し、決定し、取引を完了するのは依然としてあなただ。ほとんどの人は現在、買い物の検索にチャットGPTやジェミニをこのように使っている。

 2つ目は買い物エージェントだ。あなたはこう指示する。「ハーフマラソン用に、足首をしっかりサポートしてくれるランニングシューズを注文して。サイズは10、価格は100ドル未満で」。エージェントは商品を調べ、選択肢を絞り込み、一つを選ぶ。「人間介在」モードでは、あなたが購入を承認し、エージェントがあなたのクレジットカードを使って購入する。完全自律モードでは、システムが承認すら求めずに購入を完了する。

 これが定着するのは、実際にどれほど先になるのだろうか。初期の兆候は、完全自律モードの構築が見かけ以上に難しいことを示している。オープンAIは2025年9月、ユーザーがチャットGPT内で直接購入を完了できる「インスタント・チェックアウト」をリリースした。そのコンバージョン率は、ユーザーが普通に小売業者のサイトに移動して購入した場合の3分の1だった。5カ月後、オープンAIはこの機能を廃止した。

 より現実的な、近い将来の「エージェントによる決済」の形は、もう少し限定的で条件付きのものになる。あなたが商品を選び、「価格が80ドル未満まで下がったらこれを買って」という具合に、特定の条件が満たされた場合に購入を完了するようエージェントに指示する。エージェントは監視して実行するが、判断を下したのはあなただ。