AI投資で競争力を生み出すための条件
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サマリー:AI投資で十分なリターンを得られない企業が続出している。その原因は、AIを単なるコモディティ(汎用品)として扱っていることにある。真の価値は、企業の個別プロセスや組織能力に深く根差す固有の領域にこそ眠る。標準的なROIの物差しを捨て、投資を持続的な競争優位に変えるにはどうすべきか。本稿では、AI投資を5つの類型に分類し、それぞれの価値を引き出す新たな財務ロジックを提示する。

AIの効果をどう見るべきか

 ビジネス界のリーダーたちは、最近のAI投資に対するリターンについて――というよりリターンの欠如について――心配し始めている。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーが2025年に実施した世界規模の調査によると、88%の企業は少なくとも社内の一つの部門でAIを活用しているが、利払前・税引前利益(EBIT)に何らかのインパクトがあったと回答している企業は39%に留まる。しかも、その39%の企業の場合も、インパクトの大きさはたいてい5%に満たない。

 ボストン コンサルティング グループ(BCG)の分析によると、AIに投資している企業の60%は、実質的な価値をまったく生み出せておらず、実質的な価値を大々的に生み出せている企業は5%しかない。

 また、デロイトが2000人近くの企業幹部を対象に行った調査によると、典型的なAI投資に対して満足のいく投資収益率(ROI)を実現するまでには2~4年を要する。これは、一般にテクノロジー投資で期待される7~12カ月に比べるとかなり長い期間だ。

 さらに困惑させられるデータもある。米国企業1950社を対象にした調査によると、AI投資を10%増やしても、成長率は0.04%しか押し上げられない。典型的な「Jカーブ効果」そのままに、生産性が大きく上昇する前に、まずは短期的に生産性が落ち込む場合が多いのだ。

 また、AIに本格的に投資する会社は、社内の大がかりな変革を行うケースが多いこともわかっている。その変革の規模は、単なる自動化のレベルを大きく超えている。たいてい、社内の組織階層を減らし、高スキルの人材へのシフトを推し進め、意思決定のあり方を抜本的に見直す。

 以上のような発見は、AI投資が失敗しつつある証拠と解釈されることが多い。しかし、筆者に言わせれば、こうしたデータはさらに別の現実を浮き彫りにしている。ここから見えてくるのは、AIがコモディティ(汎用品)のように扱われているということだ。

 しかし、AIが導入企業にもたらす価値の中で最も大きい価値は、コモディティとしての価値とは別のところにある。AIが生み出す最大の価値は、おのずとローカルな性格を帯びる。つまり、AIの効果は、それぞれの企業の業務フローに固有のものであり、当該の会社独自のデータを土台にしていて、その会社が置かれている状況と切り離すことができないのだ。

 筆者の考えでは、AI投資には5つの類型がある。その5種類のうちでコモディティ的な性格を持つものは2つのみだ。ほかの3類型は、長期の競争力を生み出すものである。また、5類型はいずれも標準的なROIを基準に評価することに適していない。

AI投資の5類型

 AI投資の2つの類型は戦術的投資と見なせる。それは、市場での現在の地位を維持するためのものだ。