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戦略の「実行」に投資をしているか
リーダーがM&A、市場の再設計、AIを活用した変革に同時に取り組む中、戦略は近年になく経営幹部の注目を集めている。戦略を正しく立てるべき時があるとすれば、いまをおいて他にない。
だが同時に、戦略の策定はますます困難になっている。技術の破壊的変化、顧客の価値観のシフト、新たな競合モデルの台頭は、もはや順番に起こるものではない。それらは相互に作用し、増幅し合うことで、これまで戦略が頼ってきた軌道修正の余地を狭めている。競争の激しさは一世代前に比べて構造的に増しており、企業が競合他社に市場での地位を奪われる頻度を示す「加重平均シャッフル率」は、1990年代半ば以降で50%以上上昇している。
AIは戦略の重要性をさらに高めている。筆者らが支援したある製造業の企業は、AIを活用して2万品目の商品について週に20万件もの価格設定の意思決定を行っていた。これは人間のチームにはとうてい太刀打ちできない精度と詳細さだ。しかし、誤った前提に基づいて意思決定を高速化しても、間違った答えがより早く生み出されるだけだ。このため、変化のスピードが加速するにつれて、戦略の前提や土台を正しく整える重要性はいちだんと高まっている。
より難しいケースでは、競争優位の前提そのものが問われる。ある金融サービス企業は、他社への乗り換えは面倒なため顧客は自社に留まるという前提の下で事業を築いてきたが、近い将来に厳しい課題に直面するかもしれない。AIエージェントが顧客に代わって金融判断を下すようになれば、最も有利な条件を提示する企業に一瞬で乗り換えることができる。過去数十年にわたり顧客ロイヤルティを下支えしてきたスイッチングコストは、一夜にして消滅しかねない。
競争環境が戦略に対してこれまで以上の完成度を求めている一方で、過去15年間で戦略の質は約40%低下している。複雑性、不確実性、変化のスピードが急速に増したことで、従来のツール、プロセス、組織能力では対応しきれなくなっているためだ。同時に、マッキンゼー・アンド・カンパニーが企業の経済的利益に基づいて算出した「パワーカーブ」は両極で傾きが急になっており、勝者はより大きな利益を得る一方で、敗者はより深く沈み込んでいる。
多くの組織は、戦略の策定に経営陣の時間を投じている一方で、「モビライゼーション」(実行に向けた動員)には十分な力をそそいでいない。モビライゼーションは、意思決定と実行をつなぎ、戦略を組織の惰性から守る重要なプロセスである。
しかし、多様な業界、地域、規模にわたる企業400社以上を対象としたマッキンゼーの調査で、モビライゼーションの能力こそが、最高水準の利益を上げる企業とパワーカーブの最底辺に沈む企業を分ける最大の差別化要因であることが明らかになった。
戦略の優れたモビライゼーションとは、以下の状態を指す。
・リーダーが「都合」ではなく、適性に基づいて配置される。
・リソースが戦略的優先事項に確実に配分されている。







