例えば、ヘイ・グループが2011年に行ったグローバル人材マネジメントに関する調査では、2006年時点と比較して、多少なりとも進展が見られるのは「人材育成の仕組み整備」の領域だけで、評価や報酬等人事制度の最適化、幹部候補の育成といった領域については、ほとんど取り組みが進んでいない状況が明らかになっている。

 それは何故なのか?人材・組織のグローバル化対応を検討して行く際に問題になるのは、その取り扱う対象範囲が余りにも広範囲になるが故に、何からどう手をつけていくべきなのかが整理できないという点だ。本連載では、グローバル化対応に当たって検討が必要な論点の全体像を提示し、そこにどのような方法論・アプローチを適用して、人事・組織のグローバル化対応を進めていくべきなのかについて述べたいと思う。

次世代経営者育成

 また、よくご相談される案件として「次世代の経営幹部候補が育っていない」というものがある。これまでのように、経営環境が連続的に変化する世の中であれば、中間管理職から上級管理職へと昇進する過程で、少しずつ先達の背中を見ながら視野を拡大したり、経営ノウハウを学習したりしていけばよかった。

 だが、グローバル競争の激化や事業構造の変化により、従来までのビジネスの勝ちパターンが通じにくくなっている今日のような世の中では、意識的に経営人材を育成しない限り、経営能力の世代間継承が断絶してしまう恐れがある。ヘイ・グループでは、次世代経営人材に求められる能力として①政策提言力=自社の収益構造を深く理解した上で、利益を向上させるための具体策を提言する力、②リーダーシップ=多様な人材や組織を動かし政策を実行する力、の二つが重要だと考えている。

 まず、政策提言力だが、経営人材には、会社の使命やビジョンを踏まえた上で、その実現に向けた政策を具体化する力が求められる。その際、それが成果につながるためには、自社特有の事業構造・収益構造の全体像を理解し、利益につながるドライバーを正しく捉えることが重要だ。また、政策やゴールは決してひとつではなく、複数の可能性を探求する中から、自社が到達可能なフロンティアを明らかにし、その中から最善の選択を行う力も必要になる。