それに加えて、経営幹部は、政策の提言に留まらず、調査や実験を通じて政策の有効性を検証し、組織的に学習を積み上げる力、多様な人材や組織を動かし政策を実行する力=リーダーシップも求められる。今連載では、どのようにしてその様な能力を開発・育成して行くのかについて、ヘイ・グループとしての取り組み内容を紹介していきたい。

イノベーションの促進

 イノベーションの促進が日本企業にとって喫緊の課題であることに、異論を唱える方は少ないだろう。しかし、これを人事・組織の課題と考えることに、違和感を覚える読者もいらっしゃるかも知れない。我々、ヘイ・グループはイノベーションの促進には、人事・組織のあり様が大きな影響を与えると考えている。なぜなら、日本がもともと持っている「創造性」の発揮を阻害しているのが、組織要因と考えられるからである。

 多くの事象は、日本人が未だに創造性という観点では、世界のトップランナーであることを示している。例えば21世紀に入ってからのノーベル賞の自然科学3分野(物理、化学、医学/生物学)における受賞数で、日本は米国に次いで2位の位置にある。あるいは建築、文学、美術、映画といった領域における日本人の活躍についても、改めて触れるまでもないだろう。そう、個人レベルで見てみれば、世界を舞台にクリエイティビティを発揮して活躍している人は、枚挙に暇がないのだ。

 しかし一方で、企業発のイノベーションとなると、ここ数年は「カラッキシ」という状況である。これはつまり、個人レベルで発揮される創造性が、組織的な力=イノベーションに結び付けられていないという状況であり、であるからこそ、人事・組織がイノベーション促進のための重要な論点として浮上するのである。本連載では、イノベーションを促進するための人材・組織要件は何なのか?そして、イノベーションを促進するために人材・組織面で、具体的にどのような取り組みを行うべきなのかについて述べたい。