国内構造改革
右肩下がりの環境下では、右肩上がりの時代につくられた人事制度が、新しいビジネスの開拓を妨げることがある。まだ体力のある間に、こうした現状と合わなくなっている仕組みの改革に着手することが重要だ。
終身雇用制や年功的人事慣行の制約を受ける日本企業においては、一旦、後手に回ると、あらゆる状況がアゲインストになるからだ。今連載では、こうした改革にすでに着手した企業のやり方を中心に、右肩下がりの時代を生き抜くための人事施策のあり方について、事例紹介も行いながら解説したい。
具体的には三つの課題が想定されている。一つ目が「高齢化に伴う逆ピラミッド構造の解消策」である。人員の逆ピラミッド構造による高コスト体質を是正する上で、昇降格運用の厳格化、職務主義給与制度、早期退職優遇制度などのオプションが考えられる。それらの組み合わせ方や、導入順序によって、経営へのインパクトや即効性、組織のモラールに与える影響、リスクや難易度などがどのように変わるのかについて検討を行いたい。
次が「ビジネスの転換を阻害する右肩上がりの時代の仕組みの解消」だ。右肩上がりの発想でつくられた組織体制、役割分担、昇格運用、評価制度、価値観などが、新しいビジネスのスタイルを阻害することがある。守りから攻めに転じるために、営業・経営企画・人事が連携して評価制度の改革を行った事例について検討する。
最後が「不透明な環境に立ち向かうリーダーシップと組織学習の強化」だ。不透明な環境の中で、新しい事業を伸ばしていくためには、強力なリーダーシップと、試行錯誤を通じた組織学習が必要になる。リーダーシップ開発プログラムの中に、現場における実験を通じた組織的学習の推進を取り入れ、事業構造の改革を人事面から支援した事例について検討したい。